1:名無しNIPPER[saga]
2018/06/03(日) 22:02:19.10 ID:IMIN4WEW0
ハゲが目を覚ますと、辺りは見渡すかぎり黄金色の原野だった。
地平線から朝陽が見える。なるほど、朝の陽ざしで黄金色に輝いているのか。
ハゲは裸だった。一糸まとわぬ姿は、生まれたての赤子を思わせる。
髪の毛すら一本も生えていない。妙に頭が涼しいのは、そのせいだろう。
彼が立ち上がると、ザワザワと雑草が揺らめいた。
俺は何者なのだ。なぜ裸で草原に寝転んでいたのか。
そもそもここはどこなのか。
歩いてみる。湿った土が気持ちいい。
足の裏が少し沈み込むくらいか。毒のある虫や鋭い石も見当たらない。
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2:名無しNIPPER[saga]
2018/06/03(日) 22:04:02.80 ID:IMIN4WEW0
しばらく歩くと、水の流れる音が聞こえた。
音の聞こえた方に顔を向ければなんと、乳色の河が流れているではないか。
それも大河である。河岸に跪き、乳色の水を両手で掬ってみる。
匂いを嗅ぐ。乳の匂いがした。口に含む。冷たい。そして、乳の味がする。乳だ。この河は乳の大河なのだ。
3:名無しNIPPER[saga]
2018/06/03(日) 22:06:27.31 ID:IMIN4WEW0
さて、この乳はどこを水源としているのか。探ってみよう。
ハゲは立ち上がると、大河に沿って北へ北へと進んでいった。
そもそも、北という概念すら、この世界にはない。河の流れに逆らって歩く。それだけだ。
またしばらく歩くと、ハゲは巨岩の前に辿り着いた。
4:名無しNIPPER[saga]
2018/06/03(日) 22:25:48.22 ID:IMIN4WEW0
忽ち、分厚い鈍色の雲が空を覆い尽した。何事かと顔を上げるハゲ。
瞬間、ハゲの青白い頬に一本の赤い線が走った。ドロリ、と血が流れる。
見れば、足元に鋭く研ぎ済まされたガラスの針が刺さっていた。
それだけではない。
5:名無しNIPPER[saga]
2018/06/03(日) 22:39:39.65 ID:IMIN4WEW0
雨が止んだ。
鍼治療でも施されたのか、というほどハゲの背中にはガラスの針が突き刺さっていた。
抜くと、肌に血がじわりとにじむ。もうこの場所にはいられない。別の住処を探す必要がある。
今度は、河を下っていってみよう。乳海へ出れば、集落があるかもしれない。
6:名無しNIPPER[saga]
2018/06/03(日) 22:59:15.67 ID:IMIN4WEW0
キノコのような漆黒の巨塔が建っていた。
乳河を下った先の浜辺である。
そこは砂嘴といって釣り針のように曲がった地形となっており、その先端に塔はひっそりと建っていた。
何を目的として建てられたものか、とんと見当がつかぬ。
灯台やもしれぬ。
7:名無しNIPPER[saga]
2018/06/04(月) 14:01:48.25 ID:S1pFG4WCO
チャカポコチャカポコ珍妙な音が聞こえる。
これは一体何なのだろう。
木琴の音に似ているが、奏者の姿はまるで見えない。
間の抜けた陽気な音楽は、キノコのような建造物から発せられているようだ。
8:名無しNIPPER[saga]
2018/06/04(月) 22:59:22.87 ID:pYbnVPbk0
ハゲは蒼く澄み渡った空へ向かい、弾丸の如く落ちていった。
空が激しく波打っている。あれは海ではないのか。
ドボン、と沈み込むと周囲から墨を流したように闇が迫ってきた。
ハゲ「クッ……」
9:名無しNIPPER[saga]
2018/06/04(月) 23:26:30.74 ID:pYbnVPbk0
天漁師「よいさ、ほいさ、どっこいしょ」
水晶の小舟に乗り、シルクの帆をはためかせ、今宵も漁師は大海へ漕ぎ出す。
海を自由に泳ぎ回る星。それが漁師の獲物であり、生きる糧だ。
海に巨大な網を広げ、船曳網の要領で星を捕獲する。
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