5:名無しNIPPER[saga]
2018/06/03(日) 22:39:39.65 ID:IMIN4WEW0
雨が止んだ。
鍼治療でも施されたのか、というほどハゲの背中にはガラスの針が突き刺さっていた。
抜くと、肌に血がじわりとにじむ。もうこの場所にはいられない。別の住処を探す必要がある。
今度は、河を下っていってみよう。乳海へ出れば、集落があるかもしれない。
ガラスの痛みに耐えながら、一歩、また一歩と足を進める。ズキズキ背中が痛む。
軟膏が欲しい。布でもいい。身に纏う物が欲しい。
太陽はちょうど真南へ差し掛かっていた。昼時だ。すると、樹があった。
樹と言っても枝先から無数の眼球が生えた樹である。
あれは複眼だ。数千個の瞳が集まり、ひとつの眼球として機能しているのだ。
一個もぎとり、食べてみた。ぷぎぃ、と樹が甲高い呻き声をあげた。
ぷちゅぷちゅして美味い。
噛みごたえがある。
レンズ体も柔らかく、噛めば飲み込める。
魚の小骨のように。
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