133: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/10(日) 19:02:50.70 ID:AfpWDvGb0
意思じゃなく、心がそう言った。
自分でも気付いていない心だった。
不幸のせいじゃなく、贖罪のためじゃなく、ただ私自身が、こんなにもステージに立ちたいと思っていたなんて。
プロデューサーさんが大きくうなずく。
134: ◆ikbHUwR.fw[sage]
2018/06/10(日) 19:03:40.04 ID:AfpWDvGb0
(本日はここまでです)
135:名無しNIPPER[sage]
2018/06/10(日) 19:13:36.76 ID:WI4a1TbZo
乙
プロデューサーの言ってることは本当なんだろうか
136:名無しNIPPER[sage]
2018/06/10(日) 21:45:03.84 ID:vuO0fTZj0
乙です
お話がグッと展開していく瞬間たまらない
137: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 00:33:24.18 ID:sg2qAd8w0
10.
シンデレラとは成り上がりの物語だ。灰被りからお姫様に。地の底から天国の頂上に。
シャルルペロー、もしくはグリム兄弟のものが有名だが、類似の物語は更に古代、紀元前から存在するともいわれている。
138: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 00:35:23.21 ID:sg2qAd8w0
*
ある日、その筋では有名なゴシップ雑誌の記者が面会を申し込んできた。
薄汚れたトレンチコートにハンチング帽といういでたちの男を来客用の部屋に招き入れ、向かい合って席に着く。
形式的な名刺交換を済ませたあと、男が「お忙しい中、ありがとうございます」と言って、へつらうような笑みを浮かべた。
139: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 00:36:50.09 ID:sg2qAd8w0
彼女がアイドルになったのは3年前だ。
346プロが定期的に開催している所属オーディションを受けに来た。当時すでに19歳で、そのオーディションの参加者の中では最年長だった。他の審査員は年齢を理由に見送ろうとしていたから、彼女が合格したのは、ほとんど俺の独断といっていい。
彼女は俺の担当アイドルになった。
ある時期までは、上手くやれていたと思う。彼女は順調に人気アイドルの階段を上っていった。
仕事がうまくいけば喜び合い、祝い事のときはプレゼントを贈り合ったりもした。あくまで、仕事上のパートナーとして。しかし、いつからか彼女にとってはそうではなくなったらしい。
140: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 00:38:29.66 ID:sg2qAd8w0
*
346プロダクションでは、複数のアイドルを担当し、多忙で死にそうになっているプロデューサーが常にいる。また、アイドルとプロデューサーで折り合いがつかず、担当替えを希望しているところもある。
担当が引退したばかりで手が空いていた俺に、新しくアイドルを受け持ってみないかという提案はいくつもあった。
全て丁重に断り、代わりに他のプロデューサーたちの事務仕事を預かるようになった。
141: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 00:39:52.75 ID:sg2qAd8w0
空いた時間を使って街に出て、道行く女性を値踏みする。何日かそうしてみたが、スカウトしようと思える女性はいなかった。1週間経っても、2週間経っても成果はなかった。
やはり逸材はそうそう転がってはいない。いたとすれば、とっくに誰かに拾われているのだろう。
ふと、以前同僚のプロデューサーが立ち上げたシンデレラ・プロジェクトなる企画を思い出した。
それは個性的なアイドルの発掘・育成を目標とした企画で、プロジェクトに含まれるアイドルは総勢14名にのぼった。いささか多すぎないだろうか、などと思いながらメンバーのリストを見せてもらい、思わず感嘆の息をついたことを覚えている。14人が14人とも、金の卵と呼んでいい逸材に見えた。
142: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 00:41:20.55 ID:sg2qAd8w0
*
携帯の地図アプリを頼りに、最寄りの神社にたどりつく。「神と煙は高いところが好き」との格言通り、石造りの長い階段の上にそれはあった。
これを上るのか、とため息をついたところに、ひとりの少女が鳥居をくぐって飛び出してくる姿が目に映った。少女は急いでいるらしく、階段を2段飛ばしで駆け下りていた。
危なっかしいなと思い、眺めているそばから、少女が足を踏み外して前のめりに落下した。
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