142: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 00:41:20.55 ID:sg2qAd8w0
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携帯の地図アプリを頼りに、最寄りの神社にたどりつく。「神と煙は高いところが好き」との格言通り、石造りの長い階段の上にそれはあった。
これを上るのか、とため息をついたところに、ひとりの少女が鳥居をくぐって飛び出してくる姿が目に映った。少女は急いでいるらしく、階段を2段飛ばしで駆け下りていた。
危なっかしいなと思い、眺めているそばから、少女が足を踏み外して前のめりに落下した。
思わず声を上げそうになったが、少女は猫のように空中で体をひねり、すとんとやわらかく着地した。そして、まるで自分が足を踏み外すことをあらかじめわかっていたかのように平然と、そのまま駆け出していった。
ぽかんと口を開けてそれを見送り、気付く。女性と見れば、それが一般人であっても、「もしアイドルになったらどうなるか」と考えることが癖となっていた。品定めのつもりもなく、ただ『見る』という行為が、自分にとっては点数をつけることと同義だった。
先ほどの少女も、当然しっかりと見ていた。顔立ちはなかなか整っていたと思う。年齢は、中学2年か3年くらいだろうか。
もしも、あの少女がアイドルになったとしたらどうか?
わからない。判断が付かない。なぜわからないかもわからない。
奇妙な感覚だった。いつもなら、それが正しいかは別としても、駄目なら駄目と直感的にわかるのだ。
大いに興味をそそられた。だが少女はとっくに視界の外である。名刺を渡すどころか、声をかける隙もなかった。
この神社にはよく来るのだろうか? しばらく通い詰めてみようか?
そんなことを考えながら、ひとまず当初の目的だったお参りをしようと石段に足をかける。どうせなら少女との再会を願掛けしてもいいかもしれない。
日頃の運動不足を実感しながら階段を上り切り、本殿の前まで足を進める。賽銭箱の前に財布が落ちていた。周囲に人影はない。
拾ったそれを開くと、少しばかりの現金と、保険証のカードが入っていた。カードの氏名の欄には、『白菊ほたる』と記されていた。
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