143: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 00:42:54.16 ID:sg2qAd8w0
財布を交番に届け、城のように巨大な事務所に戻る。
本名でSNSでもやっていないかと思い、インターネットの検索ワードに名前を打ち込んでみると、情報は思いのほかあっさりと出てきた。
検索結果の一番上に出てきたのは、芸能事務所の公式サイトだ。白菊ほたるは、他事務所のアイドルだった。
先を越されたと苦々しく思う気持ちはある。しかし、これはむしろ都合がいいかもしれないと思い直した。
スカウトの難しさは、なんといっても芸能界というものの『うさんくささ』によるものが大きい。どれだけの好条件を提示したところで、なんとなく信用ならないという理由だけでも忌避されるには十分だ。だが、他事務所に所属しているということは、本人はアイドルになる意思を持ち合わせているということだ。
まずは所属事務所の情報を集めた。社員、所属アイドル、主な仕事先、財務状況。そしてその過程で、意図せずして白菊ほたるについての情報も入ってきた。『疫病神』の噂だ。
白菊ほたるの世間一般における知名度はゼロに等しい。
ただし、業界の一部においては、彼女はある意味で有名人だったらしい。
『彼女の仕事現場ではアクシデントが起きる』
『彼女が所属した事務所は潰れる』
『不幸をもたらす』
事務所が倒産しているというのは事実だった。ざっと調べた限りでふたつ、現在所属しているところを含め、少なくとも3つ以上の事務所を渡り歩いていることになる。
強く興味を引かれる。
例のシンデレラ・プロジェクトの影響もあって、芸能関係の事務所はどこも新人の発掘に力を入れている。毎日毎日、スカウトマンたちが目を血走らせて街を駆け回っている。
少しでもこの世界に興味を持つようなら言葉巧みに引き込まれ、ふるいにかけられる。ほとんどは挫折し、消えていく。一握りの才能がある者は世に出て活躍する。だから今の世では、ダイヤの原石が埋もれたままでいるということはない。
その現代に、はたして灰被りは存在するのか、いるとすればどのような場合か。ここしばらく毎夜のように想像し、考え続け、ついに出すことのできなかった解答を得た。なるほど『不幸』か。
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