白菊ほたる『災いの子』
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140: ◆ikbHUwR.fw[saga]
2018/06/28(木) 00:38:29.66 ID:sg2qAd8w0
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 346プロダクションでは、複数のアイドルを担当し、多忙で死にそうになっているプロデューサーが常にいる。また、アイドルとプロデューサーで折り合いがつかず、担当替えを希望しているところもある。
 担当が引退したばかりで手が空いていた俺に、新しくアイドルを受け持ってみないかという提案はいくつもあった。
 全て丁重に断り、代わりに他のプロデューサーたちの事務仕事を預かるようになった。
 朝から晩まで、量だけは人並み以上にこなした。いっそこのまま異動させてもらおうかとも考えた。

「休暇をとってはどうか」

「気分転換にスカウトでもしてみるといい」

 周りがそんなことを言うようになる。このままでは倒れるんじゃないかとでも思ったのかもしれない。
 担当を持っているあいだは長期休暇なんて取ることはできない。毎年、そのほとんどが虚空に消えている有給休暇を、使うなら機会は今しかないだろう。
 しかし、長年仕事漬けの生活を送りすぎて、休みというものをどう扱っていいのかわからなくなっていた。機械的な事務仕事に追われているほうが、なにも考えずにいられて楽だとすら思えた。

 一方で、スカウトというものには、わずかながら心引かれるところがあった。街角に立ち、素人の女性に声をかけて、アイドルにならないからと勧誘する。
 思えば、本当に駆け出しの、新人プロデューサーのころにやったきりだった。初心に帰るには、それも悪くないかもしれない。


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