87:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 18:56:14.37 ID:A6rjc17z0
病院を出たその足で、午後のレッスンを行うスタジオへ向かいます。
最寄駅に着くと、私を見つけたほたるちゃんが、手を振ってくれました。
「美優さん!」
88:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 18:58:37.95 ID:A6rjc17z0
薄々、勘づいていた事ではありました。
元々素質があったほたるちゃんがレッスンを続ければ、見る間に実力を身につけていくでしょう。
事実、ダンスもボーカルも、トレーナーさんが驚くほどの上達ぶりを彼女は見せていました。
89:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:03:15.38 ID:A6rjc17z0
「あばばばばばばばっ!!」
「トレーナーさーん!!」
機材の調子が悪くなったので、様子を見ようとしたトレーナーさんが突然、叫びました。
90:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:04:38.01 ID:A6rjc17z0
「はぁ、はぁ……」
――――。
疲労のせいもありますが――やっぱり――。
91:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:07:31.04 ID:A6rjc17z0
靴紐が切れたのは、再開し、ステップを踏んで直後でした。
視界がぐるりと空転し、鈍い衝撃がまず、おでこに来ました。
92:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:09:12.17 ID:A6rjc17z0
近くの病院で診てもらったところ、幸い、骨や神経に異常はないようです。
先日、オーディションでやったのと同じ捻挫でしたので、一ヶ月ほど安静にしていれば治るだろうとのことでした。
93:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:11:19.15 ID:A6rjc17z0
「美優さんは…」
ほたるちゃんの口から、ようやく――でも、涙混じりの声が聞こえました。
「……今度のフェスに、出られるんですか?」
94:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:15:22.17 ID:A6rjc17z0
「私なんて、いなきゃ良かった!!」
ほたるちゃんは、堰を切ってわぁっと泣き出しました。
「何を言うんだ、ほたるちゃん」
95:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:21:04.28 ID:A6rjc17z0
「……美優さん……ごめんなさい…」
「どうか謝らないでください」
私は彼女の手に、そっと手を添え、首を振ります。
「おかげで私も、吹っ切る事ができました」
96:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:22:36.74 ID:A6rjc17z0
あの時の、困惑気味のプロデューサーさんの顔が、脳裏に焼き付いて離れないのは、何故かしら――。
あっ――。
97:名無しNIPPER[saga]
2018/04/29(日) 19:25:13.77 ID:A6rjc17z0
右も左も、辺りはすっかりクリスマスムード。
鮮やかなイルミネーションに彩られた夜の街を、幸せそうな顔をして歩く人々。
その中にあって、私は、そう――ヒールが折れて、道端でうずくまっていたのでしたね。
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