荒木比奈「ジャスト・リブ・モア」
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6: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:05:25.22 ID:BEFLqt5g0

ゲロ音がトイレからも漏れ出しているので、私は部屋に避難した。彼女が青い顔で出てくる

「マジごめん…」

以下略 AAS



7: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:05:57.22 ID:BEFLqt5g0

原稿のデータは保存せずに、ペンタブの電源を落とした。それから、涙を止める術のない私は、枕に顔を埋め、ただひたすらに情報をシャットアウトした。何も考えないように頭の中を空っぽにして、ただ時間が過ぎるのを待った。

気がついたら眠っていた。起きたら胸と頭が痛かった。気分は最悪のままだった。

以下略 AAS



8: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:06:31.88 ID:BEFLqt5g0

言いようのない不安と、将来に対する諦めのような何か。それらを抱えたまま歩いて行く。心臓はやけにうるさいのに、頭は逆に冷静で、何だろう、こんな感覚は初めてだ。

初めての感覚に戸惑いながら、重ったるい足を動かしていく。人混みの中で、なるべく下を向いて、歩き続ける。すると、交差点で赤信号に引っかかった。ここを渡れば銀行だというのに、待ち時間がやけにもったいなく感じる。時間なんて、これから先いくらでもあるだろうにと、自虐気味に心の中で呟いた。

以下略 AAS



9: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:07:03.33 ID:BEFLqt5g0

ハズだった。




10: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:07:40.89 ID:BEFLqt5g0

突然、がっしりと、右の手首を捕まれる。

「!? え? 何!?」

以下略 AAS



11: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:08:12.55 ID:BEFLqt5g0

ジェットコースターもびっくりの急展開が私を襲う。道行く人々は、私達のほうをチラチラと見ながらも、関わらないように早足になって横断歩道を渡っていく。

お願い? お願いって…。

以下略 AAS



12: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:08:40.81 ID:BEFLqt5g0

近くの喫茶店へ並んで入る。お客さんからもあまり見られない隅っこの席で、男の話を聞いていった。

「芸能事務所のプロデューサー?」

以下略 AAS



13: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:09:12.03 ID:BEFLqt5g0

「荒木さん。俺はあなたをアイドルになってもらいたいと、心の底から思っています」

真っ直ぐ私の方を見ながら、彼は言葉を紡ぐ。私は彼の視線の耐えられず、うつむきながら、また反論する。

以下略 AAS



14: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:09:45.32 ID:BEFLqt5g0

「アタシが…」

私は自分の事を、社会の片隅で、コッソリ生きていくのが性に合っている人間だと思っていた。漫画を描いて、食べて、寝てれば幸せな生き物なのだと、そう思っていた。

以下略 AAS



15: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:10:17.53 ID:BEFLqt5g0

チクタクと、時計の秒針の音をBGMに、私は昨日投げかけられた言葉を思い返していた。

『比奈にもいつか、きっと夢が見つかるって!』

以下略 AAS



16: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2018/04/09(月) 00:10:50.39 ID:BEFLqt5g0

彼…プロデューサーさんと別れる前に、アタシは一つ条件を出した。それは、「アイドルするのは、今描いてる32ページを終わらせてから」というもの。プロデューサーさんは「終わったら連絡して欲しい」とだけ言って、もう一枚名刺を渡してきた。もうもらいましたよと指摘すると、恥ずかしそうに懐にしまった。

そして今は、ペン入れの真っ最中。驚くほどに筆は乗り、過去でも一、二を争うほど作業スピードがいい。

以下略 AAS



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