3:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:11:18.13 ID:3iKMEwHU0
「飲み過ぎなんですよ」
「久し振りに会うたんやから、飲むやろ。そして、多少は、飲み過ぎるやろ」
「まぁ、気持ちはわかりますけどね……」
何故なら、私も同じだったから。お酒は割と好きなのだ。
4:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:12:52.65 ID:3iKMEwHU0
ただ、奈緒さんがお酒に弱いのは、ちょっと意外だった。
いや、ひょっとすると平均的くらいなのかもしれないけれど、序盤から軽快に飛ばすものだから安心していつも通りのペースで飲んでしまった。
私にも責任の一端はある。とはいえ、ついてきたのは自業自得、窘めるくらいはしておきたい。
「あんまり強くないんですから、自分の限界は弁えてくださいよ。酔いつぶれたりしちゃダメです。一応、女の子……女性なんですから」
5:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:13:36.39 ID:3iKMEwHU0
「はいはい、若いですよ。まだいけます」
奈緒さんの背中を撫でる。せやろか、とこちらをみて、またウッと口に掌を当てた。
私に向かって吐かれるのはご免被りたいので、頭を便座の方へ向けさせていただく。
オェェッと嘔吐。無言で水を流す。飲み過ぎだし、食べ過ぎなのだ。
6:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:14:14.57 ID:3iKMEwHU0
「あの頃は楽しかったなぁ」
懐かしむように奈緒さんが言う。
ぼんやりとした言葉は、きっと私と同じように昔を思い返しているんだろう。
7:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:15:03.48 ID:3iKMEwHU0
ペットボトルを渡すと、さき部屋いっといてええよ、と言われた。
眠り込むまではいかなそうだし、お言葉に甘える。ここ寒いし。
洗面所からダイニングを抜けて、奥の部屋へ。ワンルームではあるけれど、広めで住みやすそうだ。
思っていたより片付いていて、こざっぱりしている。
8:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:15:29.92 ID:3iKMEwHU0
コタツ布団を捲り、中を覗き込む。中央から伸びるコードを見つけた。
のろのろ四つん這いで回り込み、ぱちりとスイッチをいれる。
すぐには明るくならない。コートを脱いで、空いているスタンドにかけさせてもらった。
さむいさむい、と広い面からコタツに入り、足を伸ばした。
9:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:16:13.18 ID:3iKMEwHU0
「お、電源わかった?」
奈緒さんがペットボトルの水を飲みながら、向かいに潜り込む。顔色は大分良くなっていた。
さっむいなぁ、と言いながら、中で私の足にぶつかってくる。
余裕が出てきた証拠だろう。無視して足を引っ込める。
10:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:16:40.53 ID:3iKMEwHU0
「あっ、そや、エミリーといえば……」
奈緒さんがだらしない姿勢でリモコンへ手を伸ばす。
ぴっと音を立てて、壁掛けテレビの電源が点いた。何度かザッピングして、目当ての番組に辿り着く。
11:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:17:12.30 ID:3iKMEwHU0
二人でしばし、コーナーが終わるまでぼうっと眺めた。
出来上がったお皿が焼き上がるのは来週らしい。きっと素敵なものに仕上がっているだろう。
「癒されるなぁ。エミリーはめっちゃ変わったけどなにも変わっとらんわ」
12:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:17:38.75 ID:3iKMEwHU0
奈緒さんはポツポツと指折りしながら、誰々はやめて、誰々はこんな仕事、と繰り返す。
思っていたよりもこの手の仕事をやめてしまった人もいた。
10年経っているのだから、当たり前かもしれない。
指折り数えていた奈緒さんは、むむっと眉を寄せる。突然、両手をあわせてぱちんと鳴らした。
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