12:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:17:38.75 ID:3iKMEwHU0
奈緒さんはポツポツと指折りしながら、誰々はやめて、誰々はこんな仕事、と繰り返す。
思っていたよりもこの手の仕事をやめてしまった人もいた。
10年経っているのだから、当たり前かもしれない。
指折り数えていた奈緒さんは、むむっと眉を寄せる。突然、両手をあわせてぱちんと鳴らした。
「……あかん暗くなる、おもろいことしよう!」
コタツから足を抜いて、がばり――とはいかず、ゆらゆらと立ち上がる。
大丈夫か、この人。吐いたりしないよね。
いつの間にかコタツの中はぬくもっている。
掌もコタツ布団の中へ入れてしまい、明かりの中でさすった。
奈緒さんはカラーボックスの前に立ち、ごそごそと何かを探している。
「何してるんですか?」
「ん? 懐かしいものをやね」
赤い箱を抜き出した。
そこから一枚ディスクを取り出し、テレビの所へ。
何かを再生するみたいだ。なんだろう映画かなとぼんやり考えて、はっとする。
この話の流れでみるものって、それはつまり――。
「奈緒さん、それは、色々とまずいのでは」
「わはは。まぁ、お互いダメージ受けるのは分かりきってるけど、懐かしいし、ええやろ」
奈緒さんが天板に置いた赤いボックスは、よくよくみれば見覚えがある。
私の実家にも同じものがあるはずだ。
テレビにステージが映し出される。さほど大きくはない。
これよりもっと大きなステージで、私達は何度も歌った。
でも、この場所は鮮明に覚えている。忘れられるわけが、ない。
音楽が流れ始めた。これは――。
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