奈緒「志保、コタツはいつでも出せるんやで」
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5:名無しNIPPER[saga]
2018/01/18(木) 21:13:36.39 ID:3iKMEwHU0
「はいはい、若いですよ。まだいけます」

 奈緒さんの背中を撫でる。せやろか、とこちらをみて、またウッと口に掌を当てた。
 私に向かって吐かれるのはご免被りたいので、頭を便座の方へ向けさせていただく。
 オェェッと嘔吐。無言で水を流す。飲み過ぎだし、食べ過ぎなのだ。
 あんまり太ったようにはみえないけれど、タレントもけっこう体型維持とか気を使っているのかなぁ。

 ペットボトルを渡す。さっきキッチンで水道水を汲んできたので、口をゆすいでもらった。
 残りをごくごくと飲み干している。水が飲めるなら、その内よくなるだろう。

「……昔を思い出すなぁ」

 奈緒さんがぽつりと呟く。ペットボトルを受け取り、蓋を閉めた。水を汲みに行こうと思ったけど、ふと気になる。

「それ、さっきも言いましたよね」
「あぁ? せやったっけ」
「何を思い出したんですか」

 奈緒さんはトイレットペーパーをくるくると丸めて、口を拭う。

「ステージ裏で泣いてると、誰かが背中をさすってくれたやん。
 歌終われば、誰かが水を差しだしてくれる。あんなん、あの頃だけやったなぁって」
「あぁ……」

 ふっと昔のことを思い出す。まるで昨日の出来事みたいに、とはいかない。
 なにせ10年近く――そう、10年もだ――経っているし、これまで努めて思い返さないようにしていた。

 ただ、奈緒さんの言葉を呼び水にして、被せていたはずの蓋は取り外された。
 記憶の箱には色とりどりの思い出が詰まっている。
 その中で、なるほど、こんな風に誰かの背を撫でたり、撫でられたり、というのはいくつもあった。

 なにせ年頃の女の子を集めて、色々と極限状態に放り込むわけだ。
 緊張やプレッシャーもさることながら、それから解き放たれる瞬間に感極まるのは珍しくなかった。
 恥ずかしながら、私も何度か泣いてしまった記憶がある。


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