40: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/11/19(日) 23:15:08.92 ID:TIWNuS4m0
「………ワッハッハッハッハッ!アースジェットで深海棲艦退治か!そりゃあいい!!」
割れ鐘のような笑い声を上げたのは、それまで会議に参加しながら沈黙していた県一等陸尉だった。よほどツボだったのか、彼はヒグマのように大きな身体を折り曲げてヒーヒーと苦しげに呼吸音を漏らす。
「確かに奴等は人類にとって害虫のような存在ですが、だからといって“じゃあ本当に殺虫剤を使おう”というのは例えジョークでも陸自の凝り固まった頭では思いつけない!なかなか、艦娘のお嬢さんは柔軟な発想をお持ちだ!」
41: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/11/19(日) 23:20:10.18 ID:TIWNuS4m0
瑞鶴さんと川内さんは、榛名さんや妙高さんのような優等生からは程遠い。特に瑞鶴さんは、他の鎮守府提督に彼女の話をすると驚かれるほど世間一般のイメージからかけ離れた自由奔放な言動をする。
だがそれ故に、この二人は場の空気に全く縛られない。寧ろどんな空気であろうとも、平然と自分たちの色に変えてしまう。
現に今も、会議室を押し潰さんばかりに覆っていたお通夜のような空気は完全にどこかへと霧散してしまった。
42: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/11/19(日) 23:23:21.91 ID:TIWNuS4m0
最前線以外の離島拠点は、直前の防衛線が破られるまでは航空支援に徹し主力に損害が出ることを極力回避。そうして段階的に敵艦隊を疲弊させつつ此方の戦力を強化していく………というのが上層部が描いている国防の青写真だが、これには深海棲艦との戦争が始まって以来付きまとい続ける大きな問題がある。
(´Д`)「これほどの規模の攻勢が行われれば、硫黄島・父島と青ヶ島間の空白海域がなおのこと重いね」
「せやな」
43: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/11/19(日) 23:29:37.12 ID:TIWNuS4m0
一応、問題を即座に解決する方法はある。青ヶ島〜硫黄島間には何もないわけではなく、鳥島という小島が存在するのだ。
決して大きな島ではないが観測所にうってつけの山が二つあり、好都合なことに無人島のため“本来なら”拠点化するにも大きな制約がない。数日で鎮守府化や防護拠点化することが難しくても、せめて駐屯地と物資の集積所が置けるだけでも事情は大きく改善するはずだ。
そもそも、これほど重要な島嶼が今日に至るまで放置されていることの方がおかしい。まともな軍人なら真っ先に目をつけてしかるべきだし、何を置いてもまずこの島に巨大な戦力を投入し堅固な防御拠点を築くべきだった。
44: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/11/19(日) 23:35:07.77 ID:TIWNuS4m0
………はぁ。無い物ねだりして駄々をこねても仕方ない。“まずはできることを”だ。
(´Д`)「もう一つ一応聞くけど、“不要になった旧学園艦の停泊・拠点化”も当然却下されたんだよね?」
「はい。燃料流出や学園艦の大破による海洋汚染の可能性を考えると、例え自主座礁ではなく停泊でも許可できないと」
45: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2017/11/19(日) 23:37:52.94 ID:TIWNuS4m0
ともあれこの国際的な背景を考えると、国内外何れにおいても“稼働できる状態の学園艦”が本格的な軍事施設として認められるのは相当骨が折れたはずだ。青ヶ島での旧BC学園を基地として転用する際にも、南首相による詭弁と建前と脅迫によって相当なごり押しをした末に認められている。
当時は艦娘が実装したてでまだ十分な数が揃っていなかったことも大きい。東洋の不沈空母たる日本のシーレーンを早急に要塞化しなければならないという背景があったアメリカの強力な後押しがなければ、青ヶ島鎮守府も存在しなかったか今のような形式ではなかっただろう。
(´Д`)「なら別の手で行こう。まず海上保安庁並びに航空自衛隊と連動し、“空白海域”の警戒を更に厳とする。これについては先週の週例会議後に僕の方から話を通して、了承も得ている。明日には、横須賀司令府から更に駆逐艦四隻も増強される予定です。
46: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2017/11/19(日) 23:40:18.80 ID:TIWNuS4m0
自然、航空哨戒の負担は龍驤さん、瑞鶴さん、千歳さんに集中する。基地航空隊も運用するなどして此方も可能な限り負担を分散できるようシフトを組んではいるけれど、それでもカバーしなければならない範囲の広さからどうしてもオーバーワーク気味だ。
(;´Д`)(再来週には海保からS-76ももう1機追加されるし、烈風が運用できる給油艦の速吸さんの派遣も要請してある。けど、対症療法にもならないな)
やはり、鳥島近海に海上拠点を設けるという抜本的な解決が最良の選択肢。だが、環境保護(笑)とやらでそれが難しい以上他の手段を考えなければいけない。
47: ◆vVnRDWXUNzh3[saga]
2017/11/19(日) 23:59:50.17 ID:TIWNuS4m0
(´Д`)「それで、次の議題だけど………県一等陸尉」
「お呼びがかからないのではと少しひやひやしましたよ」
(´Д`)「あはは、ごめんなさい。
48: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2017/11/20(月) 00:20:35.18 ID:uLSpg/zU0
しばらく、会議室に沈黙が降りた。龍驤さんや榛名さん達だけでなく、石田一尉と小栗三佐も僕の質問の意図を今ひとつ掴みかねているようだ。
「……………」
ただ1人、問いかけられた県一尉だけが明確に理解している。彼はたっぷり20秒ほど俯いて思考の海に沈んだ後、ゆっくりと顔を上げ僕に視線を向けた。
49: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2017/11/20(月) 00:30:26.18 ID:uLSpg/zU0
明日がお休みなので完結を明日まで延ばさせていただきます。眠気が限界に達しました、申し訳ありません
50: ◆vVnRDWXUNzh3[sage saga]
2017/11/20(月) 00:31:03.55 ID:uLSpg/zU0
厳密に言うと日付変わってるんで今日ですね、重ね重ね申し訳ない
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