2: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/08(水) 03:52:03.29 ID:08pW5gpZ0
言って、私は勝手知ったる給湯室へと足を向けた。
電気ポットのお湯を確かめて、彼専用のマグカップにインスタントのコーヒーを入れる準備をして。
「顔も、洗った方がいいんじゃないですかー?」
3: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/08(水) 03:53:20.75 ID:08pW5gpZ0
「できなくて、できないなら……これはもう、ホント仕方ない」
まるで誰かに言い訳するように、私はブツブツ一人で呟きながらプロデューサーのコップにお湯を注ぐ。
たちまち給湯室に広がるコーヒーの香りを吸い込みながら行方不明のカップの在りかについて考える。
4: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/08(水) 03:54:16.72 ID:08pW5gpZ0
「あ、あの」
「えっ」
5: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/08(水) 03:55:55.35 ID:08pW5gpZ0
「あっ」
暗転。スポットライトが消えるように、舞台のセットが変わるように、気づけば私は街に居た。
人混みの中を、雑踏を、喧騒に紛れるようにして立つただの少女。
6: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/08(水) 03:58:01.65 ID:08pW5gpZ0
「えっ、あの、お客さん……?」
「ふふっ、頑張ってね。春香ちゃん」
7: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/08(水) 03:59:21.75 ID:08pW5gpZ0
瑞希ちゃんがいて、美奈子ちゃんがいて。
「ゆ、夢なら……私も一つ、不思議な夢を見た……見ました」
8: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/08(水) 04:00:47.02 ID:08pW5gpZ0
===
「琴葉」
呼びかける声はとても優しくて。
9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/08(水) 04:02:00.86 ID:08pW5gpZ0
「だって、私たちはキャストだから。"田中琴葉"を演じている、無数の名も無い出演者」
「……でも、紛れもない"私"ではあるんでしょう?」
10: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/08(水) 04:03:24.25 ID:08pW5gpZ0
「夢を見たわ」
「私も」
11: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/08(水) 04:04:54.19 ID:08pW5gpZ0
「伝えたいことがあるんじゃない? 例えば自分の身代わりを探してるとか」
「どっちがこの世界に残されるか、そんな試し合いをしてるとでも?」
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