5: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/08(水) 03:55:55.35 ID:08pW5gpZ0
「あっ」
暗転。スポットライトが消えるように、舞台のセットが変わるように、気づけば私は街に居た。
人混みの中を、雑踏を、喧騒に紛れるようにして立つただの少女。
「あの、すみません」
そんな私に、遠慮がちに声をかけて来た人がいる。……上等なスーツを身に着けた、迫力のある声の男の人。
それも体格のいい強面の。見た目だけの話をするならば、その威圧感から初対面の相手を震えあがらせちゃいそうな。
「少し、お話をする時間はありますか? 実は今――」
「……もしかして、アイドルのスカウトとかですか?」
「えっ」
「だったら、私よりもっといい子が見つかりますよ」
断り、歩き出し、再び暗転。場所が事務所に戻って来る。
見慣れた景色がまた広がる。やっぱり背広姿の人が居る。
でも、彼は私の知ってる彼じゃない。
まるで新米教師みたいなその人の、眼鏡の奥の目が小さくなる。
「き、君は……あれ? 一体何処から――」
「あの、気にしないでください。すぐにいなくなりますから」
「は?」
背後で扉を開ける音がした。振り向けば春香ちゃんと私の目が合った。
……彼女とはドコで出会っても、リボンのお陰ですぐにわかるな。
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