9: ◆Xz5sQ/W/66[saga]
2017/11/08(水) 04:02:00.86 ID:08pW5gpZ0
「だって、私たちはキャストだから。"田中琴葉"を演じている、無数の名も無い出演者」
「……でも、紛れもない"私"ではあるんでしょう?」
「それは、まぁ、そうだけど。やっぱり、どこか違うじゃない」
そうして彼女はおかしそうにくすくすと微笑むと。
「だって、私ならプロデューサーのコップでコーヒーなんて飲まないもの」
「……よく言う。そんな勇気は無かったんでしょ」
「うっ」
言われた私がそっぽを向く。私は言葉を重ねていく。
「それで、私がこんな場所にいるワケは? ……できたら、
そろそろ"元の世界"に戻りたい――ああ、違う。夢から覚めて起きたいの」
「愛しのあの人に会うために?」
「……私のくせに、からかうのが結構上手じゃない」
今度は、気恥ずかしさにこっちが顔をそむける番だった。
しばらく無言。そして、どちらともなく話し出す。
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