晩夏にほどける
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17: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:26:16.88 ID:fLR/Lwcb0
 少し歩いた先にそびえていたのは、瀟洒な雰囲気が漂う、洋風の建物だった。

 彼女に追従して重い扉をくぐると、橙色の照明が少しだけ眩しい。
 冷房の効いた店内は、異国のような、あまり嗅いだことのない香りがする。

以下略 AAS



18: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:27:41.71 ID:fLR/Lwcb0
 洋酒は日頃あまり飲んでない、と言うと彼女は少し考えて、口を開いた。

「オーヘントッシャンを、ロックで」

 耳慣れない可愛らしい名前だったが、ロックというからにはウイスキーなのだろう。
以下略 AAS



19: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:28:35.38 ID:fLR/Lwcb0
 やがてオールドグラスが二つと、ナッツの盛られた小皿がカウンターに置かれる。
 琥珀色の液体に浮かぶロックアイスは、小さな氷山のようだった。

 小さく乾杯し、すぐに彼女がグラスに口を付けた。
 彼女の喉がこくりと動くのを、目を離すこともできないまま見つめてしまう。
以下略 AAS



20: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:29:45.08 ID:fLR/Lwcb0
「よう来るんよ、このお店」

「一人で飲んどうたい」

 彼女の声に、いつもの調子が戻りつつあった。
以下略 AAS



21: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:30:43.89 ID:fLR/Lwcb0
 相談がどうこうという前に、差し当たってまず酒を飲むことになった。
 殆ど素面のおれに気を遣う半分、自分も飲みたい半分だろうか。なんにせよ、ありがたかった。

 オーヘントッシャンというウイスキーは、グラスを傾けると仄かに柑橘類の香りがして、これが飲みやすい。
 雑味がなく軽やかで、一口で気に入った。
以下略 AAS



22: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:31:29.01 ID:fLR/Lwcb0
「でも、たまには息抜きも必要たいね」

「息抜き、ですか」


以下略 AAS



23: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:32:02.28 ID:fLR/Lwcb0
「あんね、夏目君」

 彼女の声のトーンが、少し落ち着いたような気がした。

「なんでしょう」
以下略 AAS



24: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:32:35.91 ID:fLR/Lwcb0
 もう既に半分ほどになったグラスをテーブルに置いて、彼女がおれを見つめる。
 たしかに艶のある表情でもあったけど、なんとなくいつも通りの彼女も、そこに同居しているような気がした。

 緊張を覚えつつ、おれは彼女の言葉を受けた。

以下略 AAS



25: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:34:15.37 ID:fLR/Lwcb0
「好きな食べ物は、なに?」



「え?」
以下略 AAS



26: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:35:53.45 ID:fLR/Lwcb0
「そんなら、目玉焼きには、なにかけとう?」

「醤油ですね」

「あ、うちも同じ。じゃあ、最近泣いたことある?」
以下略 AAS



27: ◆K5gei8GTyk[saga]
2017/08/24(木) 22:37:20.62 ID:fLR/Lwcb0

「今まで夏目君とは、趣味の話でばっかし盛り上がってきようやろ?」

「やけん、こげなことも知りたいなあって、前から思っとったの」

以下略 AAS



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