女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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88:名無しNIPPER
2017/08/29(火) 21:24:50.90 ID:KsUO0z3M0

「学力試験第一位、佐藤祐樹」

 それは、なにもかもを破壊する魔法の呪文のようだった。
 照は濁りきった瞳でそれを発した。
以下略 AAS



89:名無しNIPPER
2017/08/29(火) 21:26:34.83 ID:KsUO0z3M0
「なにをするつもりなのか、私にはわからない。だがこれは、確実にウチに来た理由にかかわってるんだろうね。君は社会を変えたい、と言った。けど普通、少なくともウチにくる前に、その学力をもってなにかをやろうとするだろう」

 冷汗が背をつたうのを感じていた。
 だがそれでも、平然としたなりを装って僕はこう言う。

以下略 AAS



90:名無しNIPPER
2017/08/29(火) 21:27:15.22 ID:KsUO0z3M0
その大声は、照を黙らせた。
 彼は何も言わない。言えないのだろう。きっとその情報はボスから話される。彼にはその権利がない。……今、彼が言っている言葉だって、おそらくは逸脱した行為なのだろう。
 照は天を仰ぐ。何かを誤魔化すみたいに、きまり悪く笑う。

「ああ、自分らしくないことをしたなあ。嫌になるぐらい感情的な行動だ。なあ、祐樹君?」
以下略 AAS



91:名無しNIPPER[saga]
2017/08/29(火) 21:27:48.16 ID:KsUO0z3M0
「よう、小僧……じゃなくて祐樹。最近、首尾はどうだ」
「上々ですよ。現実的に可能な限りにおいて、ですが」

 からからと、ボスは笑う。
 僕はゆっくりと息を吸う。照に言われた言葉がわずかに余韻を残していた。それはこれからのことに邪魔になる。必要な要素だけ抜き取り、使うのだ。ただただ、最善を選ぶ。今まで通りに、同じことをすればいい。
以下略 AAS



92:名無しNIPPER[saga]
2017/08/29(火) 21:28:15.72 ID:KsUO0z3M0
「教える気はなかったんだがな。今教えとかないと後が怖そうだ。まあ、どっちでもよかったんだが、仕方ない。あのな、祐樹。おまえは……」

 俺の後継者になるんだよ。

「…………は?」
以下略 AAS



93:名無しNIPPER
2017/08/29(火) 21:28:42.48 ID:KsUO0z3M0
並びたてられていく言葉の数々。
 それは、やや過剰な称賛とも言えた。僕が精密な機械を目指す、ミスをしないことを目指す、完璧な人を目指している、というのはあながち間違いではない。
 人心掌握。処世術。人間関係。
 ボスの言っていることに、いくつかの心当たりはある。僕がどういう目的で、人との付き合いを円滑にしたのかとか、そういうことは、あまり関係がないのだろう。結果はすでに出ている。それが自分に嘘をついた仮初の姿だったとしても、三か月の期間、演じ続けられたのなら、これからもできる。『能力がある』そういうことだ。

以下略 AAS



94:名無しNIPPER
2017/08/29(火) 21:29:16.51 ID:KsUO0z3M0

 それらすべてが、最終的に自分に返ってくるかもしれないことが分かっていない奴。
 これらは、軽率な行動と言え、しかし細かすぎて絶対に自分に返ってくるとは言い切れないものだ。人を傷つけたり、自分を誇示することによって、周りに強い自分の印象を与える。発言力の上昇と、声の大きい者に付き従う人種の列が、さらに強化を生み出す。暗にスクールカーストのようなものができあがる。
 だがこれらには代償が存在する。強さは誇示するがための行動は、結局、人を不快にさせることが多い。大きなミスからその立場は危うくなり、影で失敗を笑われる。
 無論、そういうことにならないことだって多くある。要するに致命的なことをしなければ、その立場は続いていくことが多い。メリットとデメリットをどれだけ天秤に乗せるかだ。致命の時に仲間がいなくなるかもしれない。影で何かを言われるかもしれない。だが優位性による通常時の満足感は得られる。
以下略 AAS



95:名無しNIPPER[saga]
2017/08/29(火) 21:29:47.23 ID:KsUO0z3M0
引き戻された。頭の中にあった絶望を、言葉を、思い出した。
『諦めるんだ。それは絶対に成功しない』
 照の言葉。
 それは僕がこの先、有利に動かすための言葉だ。だがそこに『彼女』は入ってない。ただ僕一点のみの有利。未来の行動の制止。
『諦めたほうがいい』
以下略 AAS



96:名無しNIPPER[saga]
2017/08/29(火) 21:30:39.47 ID:KsUO0z3M0
 照は、あくまで僕に心の準備と、諦めるという選択肢を濃厚に示しただけだった。救いはなかった。

 これになんと答えるか、それは決まっている。だがなんと答えるのか、どう説得するのか。
 予感があった。予定調和めいた不幸。
 諦めれば、僕の人生は決まる。だが諦めなければどうなる? ただ、ろくなことにならないのは確定していた。
以下略 AAS



97:名無しNIPPER[saga]
2017/08/29(火) 21:31:25.78 ID:KsUO0z3M0

「おまえは思ったことがあるはずだ。この組織の存在は、むしろ結果論でいえば、市民の団結と法の統治を補助している、と」

 まさか。

以下略 AAS



98:名無しNIPPER
2017/08/29(火) 21:31:55.60 ID:KsUO0z3M0
「――我らが住まうは、犠牲の都市だ」


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