女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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91:名無しNIPPER[saga]
2017/08/29(火) 21:27:48.16 ID:KsUO0z3M0
「よう、小僧……じゃなくて祐樹。最近、首尾はどうだ」
「上々ですよ。現実的に可能な限りにおいて、ですが」

 からからと、ボスは笑う。
 僕はゆっくりと息を吸う。照に言われた言葉がわずかに余韻を残していた。それはこれからのことに邪魔になる。必要な要素だけ抜き取り、使うのだ。ただただ、最善を選ぶ。今まで通りに、同じことをすればいい。

「それで、話とは何ですか?」

 不用意なことは決して喋らない。相手の出方に合わせ、対応する必要がある。

「ああ、そうだったな。俺はおまえに話があるんだよ」

 狭い個室。机と椅子と、湯気の立つコーヒー。
 ボスはそれに口をつける。ボスが好む、あの苦さと甘さを混同したコーヒーだろう。僕はそれに触れなかった。

「苦いな。なのにわけもわからんぐらいに甘い。良いことと悪いこと、どっちから先に聞きたい?」
「ボスが好きなように」
「ははは、つれない奴だな。堅物すぎると人生損だぞ? もっと楽に生きろ」

 まるで、照のようなことを言う。だがまるで意味の違う言葉だ。込められた意味が、感情が、厳しさが、そういうものがない。

「では、おめでとう祐樹君。君は晴れて我がレジスタンスの幹部候補になったのだ! 嬉しいか?」

 わざと場を盛り上げるような演技がかった仕草。

「……そうですね。早すぎる気もします。悪い点を聞いてから判断したいです」
「いや、お前が嫌がらないなら特にない」
「なら、嬉しいんじゃないでしょうか?」

 それは組織が僕の価値を認めたようなものだ。僕にとっては得になる。だが、それにしても早すぎる。幹部候補? 入ってたった三か月程度の子供を? 無論、本物の幹部になるには時間がかかるだろうが、そういう問題を差し引いてもおかしい。組織は人材が不足しているとは思っていたが、ここまでではないはずだ。

「いろいろ照に教えてもらえ。羅門は武闘派だからおまえとはそこまでかかわりがなくなるな。それで――」
「――待ってください」
「なんだ?」
「なぜ僕なんですか? 不満があるわけじゃないんです。でも、早すぎませんか?」
「知りたいか」
「はい」
「……どうしてもか?」
「……はい」

 はあ、とボスは溜息をついた。



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