女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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92:名無しNIPPER[saga]
2017/08/29(火) 21:28:15.72 ID:KsUO0z3M0
「教える気はなかったんだがな。今教えとかないと後が怖そうだ。まあ、どっちでもよかったんだが、仕方ない。あのな、祐樹。おまえは……」

 俺の後継者になるんだよ。

「…………は?」

 はじめは、幻聴かと思った。だがボスの真剣な顔や、何も次に喋らないことから、本当なのだと分かった。
 これは夢か? あまりにもうまくいきすぎている。もし夢でないのなら、彼女を助けられる確率はぐんと伸びる。本来、僕単独で、卓也さえなしに彼女を助けようと思っていた。彼がいようといまいと、見つかったら守衛に警戒される。そうなれば終わりだ。つまり、卓也はいてもいなくてもそこまで救出の確率は変わらない。だが、組織の手があるなら話は違う。何事もなく、長い間安全すぎた犠牲者の収容所は、僕単独での救出成功率が二割ほどある。ならば、プロに任せれば九割……いや、ほぼ確実に成功する。
 胸が高鳴る。現実的だ。これならできる。彼女を助けられる!
 ……落ち着かなくては。まだやるべきことは残っている。

「驚いたか?」
「そりゃ……そうですよ」
「おまえのことだ、きっと理由を知りたいだろう」
「お願いします」
「まず、後継役の問題は深刻だった。照も羅門も、最終まとめ役には向かないからな。それで、人材が欲しかった。客観的に物事を見れる奴。冷静でいられる奴。自分を機械にでもするかのような、そんな奴」
「……」
「自分自身を歯車に徹底しようとするような奴だ。何かを遂行するためには、感情は邪魔でしかない。冷静に冷徹に、組織柄、そういうことができなければならない。だがそれでも、俺たちは人間で、支配しなければならないのも人間だ。単純な機械じゃだめなんだ。組織の頂点は人に裏切られにくい、人の気持ちがわかって、場合によっては汲み取れなくてはならない。……再度いうが、組織柄上、な」

 なるほど、と思った。
 レジスタンスは危うい組織だ。それこそ、こんなに存続できたのが不思議なぐらいに。五百年の歴史を誇るこの都市で、レジスタンスは実に二百年もの存続を続けている。都市の歴史の半分ぐらいだ。これだけの期間、そこそこの被害を、与えているのにも関わらず。

「わかるか? 要するに『機械を目指す人間』が欲しかったんだ。なれないと知っていながら、完璧を目指す。そういう人間はなにかしらで能力を発揮する。それがボス、という存在に適役かは置いといてだが。照は適役ではなかったタイプだが、能力の高さは発揮している」



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