女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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89:名無しNIPPER
2017/08/29(火) 21:26:34.83 ID:KsUO0z3M0
「なにをするつもりなのか、私にはわからない。だがこれは、確実にウチに来た理由にかかわってるんだろうね。君は社会を変えたい、と言った。けど普通、少なくともウチにくる前に、その学力をもってなにかをやろうとするだろう」

 冷汗が背をつたうのを感じていた。
 だがそれでも、平然としたなりを装って僕はこう言う。

「それがなんだっていうんです?」

 照は、長い、長い溜息を吐いた。

「助けるつもりかな?」
「ええ。組織に迷惑はかけません。僕が自分――」
「諦めたほうがいい」

 ――なぜ。

「そうかもしれませんね。でも一度、ボスに相談しようと思ってるんですよ」

 照の判断は関係ない。ボスの指示で全てが動くのだ。有利となる材料はいくつかある。照はやり過ごせれば、それでいい。

「それはやめたほうがいい。絶対に成功しない」
「……理由を聞いても?」

 照はただ首を振った。

「君のためを思って言っているんだよ。理由は言えない。でも絶対、止めたほうがいい。諦めるんだ」
「それは僕が選びます」

 今更、選択肢がほかにあるとは思わない。
 照は痛みを抱えたような表情をしていた。僕に対しての悪感情は感じられなかった。ただただ、同情していた。

「今の君を見ると胸が痛むよ。私が言えることじゃないが、自分を責めずに、もっと楽に生きたほうがいい。私はね、君の生き方を尊敬してるんだよ。信じられないことかもしれないけど、君には幸せになってほしい。君みたいなひとが報われるべきなんだ」

 それはひどく矛盾した言葉だった。
 照は本心でそう言っているのだろう。でもやはり、それは僕にとって関係がないことだった。

「なあ、君のいうことはわかる。わかるんだよ。でも私は、感情的にそれは嫌なんだよ。君は自分を絶対に許さないだろう。でも時間が解決してくれるさ。バカみたいなことをいうけど、それだって感情的な愚かな行動だ。私が君に言う資格がある言葉はなに一つとしてない。だけど……」

 そうだ。それらすべては照が正しく、もう想定の終えた結論だ。僕は間違っている。それでもやり遂げる必要がある。
 それは経験や思い出、人生と目標において、必要なことだから。

「もう一度言う。君は――」
「――なんでですか!」


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