女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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96:名無しNIPPER[saga]
2017/08/29(火) 21:30:39.47 ID:KsUO0z3M0
 照は、あくまで僕に心の準備と、諦めるという選択肢を濃厚に示しただけだった。救いはなかった。

 これになんと答えるか、それは決まっている。だがなんと答えるのか、どう説得するのか。
 予感があった。予定調和めいた不幸。
 諦めれば、僕の人生は決まる。だが諦めなければどうなる? ただ、ろくなことにならないのは確定していた。

 ――予感がある。

 たぶん、殺されるか、飼い殺しか。結末が顔を覗く。うすら寒い。

 ――だがそれでも。

「無理です」

 嫌だとか、どうしてだとか、そういうことは言わなかった。
 断定の一言。愚かしい、そういう行動。だがそれでも、やるしか、ないのだ。

「――諦めろ」

 命令形。最終通告。
 けれど決して、揺らぐことはない。ばかばかしい気さえする。結果はなかば、わかっている。なのになぜこんなことをするんだろう?

「――無理です」

 ボスは目を閉じた。そして開く。諦めと失望。

「やはりか。俺自身がおまえを見てきたわけじゃない。だがやはり、そういうやつなんだな」

 悟ったような、諦めたような、そして――ただただ残念だという声音。それが全てを体現していた。結果だった。

「さっきまでの話はなしだ。おまえは一生平で、もう外に出すわけにはいかない」

 殺しはしない。せめてもの、温情ってやつだ。どうせ個人じゃどうにもできないしな。ボスはそう言った。

「いいえボス。彼女を助けるのはぽく一人です。組織には一切負担をかけることもなく、連れてきます。その後は忠義を誓います。身を捧げます。それでなにもかも、あなたの思がままに。だから一度でいいんです。チャンスを下さい」

 なにもかも、材料をぶちまけた。出せる手札全てだった。しかし、ボスはそれらに大した反応はしない。どうでもいい、とばかりに。

「教えてやるよ。この組織のことを。そうすればおまえは納得するだろう。諦めがつけば道もわかれるかもしれない、だから」

 ボスには、僕の言葉欠片ほども届いていなかった。

「なあ、考えた事はないか? なんでこんな社会の害になる組織がこんなにも長い間続いてるのかって」

 なにかを刺激するような声音。



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