女「犠牲の都市で人が死ぬ」 男「……仕方のないこと、なんだと思う」
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95:名無しNIPPER[saga]
2017/08/29(火) 21:29:47.23 ID:KsUO0z3M0
引き戻された。頭の中にあった絶望を、言葉を、思い出した。
『諦めるんだ。それは絶対に成功しない』
 照の言葉。
 それは僕がこの先、有利に動かすための言葉だ。だがそこに『彼女』は入ってない。ただ僕一点のみの有利。未来の行動の制止。
『諦めたほうがいい』
 そうすれば、僕だけは有利になる。そういう情報。

「……ボス、言わなければいけないことがあります」

 そう、ここでいわなくてはならない。
 僕が助かってなんになる? 決意の日以来、もう自分の中にそういう選択肢は存在しない。
 当然、ボスだって僕が彼女を救おうとしているなど、知っているはずだ。照が報告したのは間違いない。照はボスに逆らわない。でもその中で、僕を助けようとした。
 もしかしたら、ボスは『救う』なんてことは知らないかもしれない――はずがない。
 そういう人種だと、わかっている。

 試されている。きっと最後の。言わなければならないこととして。
 ここを境界線だとボスは言った。匂わせた。次はない、と。

「僕は今回選ばれた犠牲者、近藤雪を助けたい」

 言った。どうなるかはわからない。だがそれは、彼女を諦めないという選択を取るなら、最善のはずだった。

「そうか」とボスは短く言った。

 沈黙は続く。僕のコーヒーは満たされていた。ボスのコーヒーは空だった。コーヒーは暗く、濁っていた。

「知っていた。照から聞いた。俺に会う前、照に会っただろ? どうせ言わなくていいことをアイツは言ったんだろうな」

 乾いた笑い声。やはり、照は組織にとって余計なことをしていた。だが、ボスは見通している。照すらも、見通している。ぞっとする。なにもかも利用して、てのひらのなかだ。

「テストだったんだよ。俺の独断でなにもかもを謀った。お前がそれを言ったのは今この場までは正解だ。そして言うことがある」

 続く言葉は、わかっていた。

「諦めろ」


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