7:名無しNIPPER[saga]
2017/07/22(土) 12:09:05.67 ID:xtDe7XNk0
はぁとさんの担当に決まったとき、僕は頭を抱えた。プロデュースの方法がわからなかったのだ。
王道の正統派アイドルならまだしも、僕よりも年上で、
アイドルよりどちらかというと芸人気質な彼女を輝かせるのは新卒のぺーぺーである僕には難しすぎた。
二人して仕事のない日々が続いた。僕は一日の大半を事務室で、はぁとさんはレッスン室で過ごした。
8:名無しNIPPER[saga]
2017/07/22(土) 12:11:56.17 ID:xtDe7XNk0
「アイドルはね。はぁとの夢だったの。憧れだった。
小さいときに目の前でアイドルのお姉さんを見た時に感動したの。
すごくキラキラしてて眩しくて。私もこんな風になりたいって思ったの。
だからどうしてもアイドルになりたかった。確かに今は崖っぷちかもしれないけど、それでも今がすっごく楽しい」
9:名無しNIPPER[saga]
2017/07/22(土) 12:15:05.00 ID:xtDe7XNk0
♪♪♪
そのはぁとさんは朝の6時に僕の家にやってきた。
僕ははぁとさんが何度も鳴らすインターフォンの音でたたき起こされた。
10:名無しNIPPER[saga]
2017/07/22(土) 12:20:07.72 ID:xtDe7XNk0
モニタを切り、僕は身支度を整える。はぁとさんといるといつもこうだ。
周りから見ても、僕自身から見ても、僕はいつもはぁとさんに振り回されている。
スニーカーを履き、ドアを開けた。夏の陽射しが降り注いで、僕は目を細める。
今日はいつも以上に熱い一日になりそうだとため息をついてから、柄にもなくはぁとさんの元へと走りだす。
11:名無しNIPPER[saga]
2017/07/22(土) 12:22:09.92 ID:xtDe7XNk0
「どうしたんですか。これ」
「海いくって言ったら、ちひろちゃんが貸してくれた♪」
「あの千川さんがですか」と僕はあくびをしながら言った。
「なに、プロデューサー、昨日眠れなかったの?」
12:名無しNIPPER[saga]
2017/07/22(土) 12:25:04.38 ID:xtDe7XNk0
☆☆☆
鍵を回すと、アイドル事務所の車らしく、所属しているアイドルの子たちの曲がかかりはじめた。
ナビの目的地に海を設定し、車を走らせる。はぁとさん曰く、
13:名無しNIPPER[saga]
2017/07/22(土) 12:27:33.37 ID:xtDe7XNk0
「明日うちのプロデューサーと海行くから車貸しておくれ☆って頼んだら、
楽しんでくださいねって簡単に貸してくれたぞ」
「それは事務員としてどうなんですか」
「うーん、わかんない。でもちひろちゃんはいい子だぞ。アイドルの子たちのことすごく気にかけてくれてるし」
「その優しさをプロデューサー達にも与えてくれるよう言ってくれませんか」
14:名無しNIPPER[saga]
2017/07/22(土) 12:30:12.93 ID:xtDe7XNk0
神谷奈緒ちゃんの曲が終わると、
はぁとさんは何かに気づいたようで、「おっ」と声をあげ、窓を全開にした。
暑さが充満した車内に夏の風が一気に吹き込んでくる。
風にかき消されないように声のボリュームを少し上げて僕は聞いた。
15:名無しNIPPER[saga]
2017/07/22(土) 12:32:44.44 ID:xtDe7XNk0
短いトンネルだったのか、すぐに出口の明かりが見えてきた。僕はサンバイザーを構える。
強烈な太陽の光が車内に降り注ぐと同時に、はぁとさんが声をあげた。
「プロデューサー!」
16:名無しNIPPER[saga]
2017/07/22(土) 12:36:04.52 ID:xtDe7XNk0
♪♪♪
駐車場に車を止める。
車のトランクにははぁとさん持参の海を楽しむための荷物がたくさん入っていたけれど、どれも下さなかった。
僕とはぁとさんの目の前で広がる海は、陽の光をたくさん浴び、
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