10:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 21:59:31.10 ID:55jPn/3I0
それもこれも、この人だからでしょう。
わざとらしいくらいの甘ったるい声に、素顔も分からないくらいの濃いお化粧。でも、飄々としていて、楽しくて……優しくて、温かくて、この人なら、本音を言っても大丈夫だと、確信できました。
「プロデューサーさんのいう島村卯月は――データ上の存在ですよね」
11:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:00:03.19 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
カメラからの映像をシャットアウトして、情報を最適化します。
目を開いたときに広がっていたのは、小さなお部屋。
暖色の壁紙に小さな机。ふかふかのベッドと、ちょっと散らかった本棚。
12:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:00:32.34 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
――これは、なんでしょう。
微睡むように曖昧で不確かな世界の中で、私は誰かの歌を聞いていました。
13:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:01:34.60 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
「なんだろう」
感覚が戻った時、まだ自分の存在がハッキリしませんでした。
14:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:02:50.00 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
翌日も、プロデューサーさんとのお話は続きました。
「アイドルって、なんですか?」
15:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:04:23.60 ID:55jPn/3I0
アイドルと言う概念はまだ生きていて、21世紀に生まれた大型グループはまだまだ大人気。
私も、あるクールで澄んだ瞳のアイドルが大好きで、ついつい動画や雑誌を集めちゃってます。
本当なら実際にライブにまで足を運びたいけれど、私の体では無理なことですよね。
最初はどうなるかと思いましたけれど、楽しい毎日です。
16:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:05:19.97 ID:55jPn/3I0
「そうだっ」
ぴょこぴょこと、スキップしながら鏡の前に立ちます。
鏡の中には、制服姿の私の姿。ピンと背筋を伸ばせば、少しだけカッコよく見えます。たぶん。
17:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:06:05.98 ID:55jPn/3I0
色彩豊かな可愛らしい衣装――まるで、アイドルが着るような、実用性のないファッション性のみを追求したデザイン。
それも、その筈です。幾つかの衣装は、かつて『島村卯月』が着ていたものを再現したもの、だそうです。
「……こんなドレスを着て、みんなの前に立っていたのかな」
18:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:07:23.49 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
――頻繁に、夢を見るようになりました。
――プロデューサーさんが言うには、スリープモードの間に情報を整理しているので、その副作用ではないか、だそうです。
――でも、それは関係ないと思います。
19:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:08:58.48 ID:55jPn/3I0
◇◇◇
「――卯月ちゃん」
声が聞こえました。慌ててモニターを展開すると、慌てた様子のプロデューサーさんが覗き込んできます。
20:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:10:05.66 ID:55jPn/3I0
「――そろそろ、いいかな」
「えっと、なんですか、急に真面目な顔になって」
「アイドルに、なってみないかい」
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