■■「島村卯月をはじめましょう」
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11:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:00:03.19 ID:55jPn/3I0
◇◇◇

 カメラからの映像をシャットアウトして、情報を最適化します。
 目を開いたときに広がっていたのは、小さなお部屋。
 暖色の壁紙に小さな机。ふかふかのベッドと、ちょっと散らかった本棚。
 そして、立てかけられた身長ほどの鏡。

 鏡の中には、『島村卯月』――私の姿があります。

 ここは、私のために用意された仮想空間上のお部屋です。
 もちろん現実には存在しない、私と同じ不安定な場所です。データを書き換えれば模様替えもらくちんにできるし、ここから外の世界を覗くこともできるそうです。

「はあ……」

 ベッドの上に倒れこむと、自然とため息が出ました。
 柔らかいお布団の感触がします。きっと、お外で干していたんでしょう――そんな訳ないですけど。
 窓の外を見ると、星と月が浮かぶ夜空でした。これは、日本時間とリンクして自動的に切り替わるそうです。
 すべて、造りものだと私の中の情報がそう言っています。
 だけど、肌から伝わる感触はまるで違和感がない。私の肌ですらデータでしかないはずなのに、すべては本当に存在するみたいです。

「疲れた――」

 だけど、この感覚はなんだろう。
 プロデューサーさんのお話は楽しかった。けれど、なんだか聞いていて疲れました。
 でも、この疲れたと言う感覚はどこから来るのでしょうか。

 疑問に答えてくれる人はいません。疑問に答えを出せるだけの情報も経験も、私にはありません。
 やがて、私の意識は徐々に鈍くなる――



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