■■「島村卯月をはじめましょう」
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21:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:11:17.82 ID:55jPn/3I0
 プロデューサーは、静かに首を横に振りました。

「近いけれど、違うわ。今聞いているのは、アナタがアイドルになりたいのか、よ」

「だとしても、『島村卯月』の人格を模した人工知能がアイドルになると言うことは、アイドル『島村卯月』を再現することと似通っています」
以下略 AAS



22:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:12:25.63 ID:55jPn/3I0
「『島村卯月』を造るなら、なぜ私はこのような中途半端な状態なんですか?」

 そう、私の存在と同じで、中途半端もいいところだ。
 人工物である筈なのに、まるで心があるように振る舞い、それが自然だと、自分でも思っている。
 在り方として、ヒトでも機械でもない、なんでもない存在です。
以下略 AAS



23:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:13:27.17 ID:55jPn/3I0
 自分の存在意義を否定することだと、分かっていました。
 だけど、プロデューサーさんが語る『島村卯月』の姿と、私が素敵だと思った『島村卯月』の姿。それは、魂の宿らない人工知能に出来るとは思えない。
 人間でない物が人間であるかのように振る舞う。その歪さは、私から見ても分かる。

「『島村卯月』も、演じてもらうことでアイドルとしてこの世界に出てきました。だから、今の世代の演者さんにやってもらった方が――」
以下略 AAS



24:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:14:36.73 ID:55jPn/3I0
「アナタが言ったように、演者さんがアイドルを演じる方がいい――みんな、そう思っていたの」

 ゾクリ、と、背中に悪寒が走った気がします。
 もちろん、そんな感覚を抱くことなんて、私には絶対にないはずです。

以下略 AAS



25:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:15:25.24 ID:55jPn/3I0
「一人の演者が引退をした。当時の『アイドルマスターシンデレラガールズ』は、引退した演者の二代目を用意した」

「――それは、皆さんが受けいれてくれたんですか?」

 プロデューサーさんは、首を横に振ります。
以下略 AAS



26:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:16:55.16 ID:55jPn/3I0
 泣いているような、笑っているような、よく分からない顔をしていました。
 私が人間なら、それを上手く定義できていたかもしれません――

 ただ、分かるのは、プロデューサーさんは、何かを諦めていませんでした。
 それを知ったうえで、何かを信じている。
以下略 AAS



27:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:17:29.22 ID:55jPn/3I0
◇◇◇

 その日、『島村卯月』と彼女は言いました。

「私は、引退します。けれど、『島村卯月』はまだ、ここに居ます」
以下略 AAS



28:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:18:38.40 ID:55jPn/3I0
◇◇◇

 ――夢を見ました。

 美穂ちゃんの声が、急に変わりました。
以下略 AAS



29:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:19:24.51 ID:55jPn/3I0
 だけど、離れられなかった。

 私の中の、『島村卯月』が言っていた。

 終わりたくない。
以下略 AAS



30:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:20:07.49 ID:55jPn/3I0
◇◇◇

 日本時間で朝になったのを確認すると、すぐにプロデューサーさんに連絡をします。
 私のメッセージを受け取ったプロデューサーさんは、慌ててネットワークを閉じると、すぐに駆けつけてくれました。

以下略 AAS



31:名無しNIPPER[saga]
2017/07/15(土) 22:21:31.24 ID:55jPn/3I0
「もちろん、演者を使ったアイドルは一度失敗している。だけど……あまりにも方法が不完全です」

 『島村卯月』として私を造らずに、一から教育したこと。
 そして、最後まで決断を私に委ねたこと。

以下略 AAS



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