モバP「雪の頃のとんぼ返り」
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1:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:22:52.59 ID:sKp9/69N0
モバマスSS
モバPメイン
季節外れ注意
ちょっと暗い

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2:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:23:46.02 ID:sKp9/69N0
体の芯どころか魂まで凍りそうな12月の冷気は北極圏由来で、偏西風に押しやられてせり出して来た大寒波が、
この時期の関東なら本来降らないはずの雪を大量に降らせていた。

北日本や甲信越で水分を十分に絞りきれなかった風がそのまま関東にまで降りて来て、12月としては未曾有とも言える大雪をもたらした。
周知の通り関東は雪が降りづらいことで有名で、雪の対策なんてものは雪国のそれと比べるともはや無防備同然、
以下略 AAS



3:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:24:15.61 ID:sKp9/69N0
その日、俺は家で一人クリスマスパーティの準備をしていた。
なんてことはない。一人暮らしのさみしい男がちょっとばかし豪勢に一人飯をするだけの話だ。
飾り付けも最低限。手のひらサイズのクリスマスツリーだけで十分。

前の職場──プロダクション──を辞めてからどれだけ経つだろうか。年数を数えるのも面倒だ。
以下略 AAS



4:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:25:01.53 ID:sKp9/69N0
〜〜〜〜〜
チキンにかぶりつこうとした時、玄関から乱暴だが弱々しいノック音が聞こえてきた。
最初は荒れ狂う雪と風のせいで玄関ドアが鳴いているだけだと思っていたが、どうやら人の声もする。
こんな大雪の日に何の用か。

以下略 AAS



5:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:25:43.24 ID:sKp9/69N0
しかし来訪者とあらば追いかえさなくてはならない。
うちにはTVもなければパソコンスマホその他液晶を持つ機械類は時計や体温計でさえ置いていないのだから、
公共放送の集金なぞ鼻も引っ掛けないはずなんだが。

玄関ドアを開けると、誰もいない。
以下略 AAS



6:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:26:12.23 ID:sKp9/69N0



──ああ、そうだ。この子は。

以下略 AAS



7:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:27:16.68 ID:sKp9/69N0
俺はやっと思い出した。この子は俺がプロデューサー業をやっていた頃の担当アイドルだった少女たちの一人、龍崎薫だ。

「薫じゃないか。久しぶりだな。どうしたんだ、こんな大雪の中で」

「せんせーに会いたくなっちゃって!」
以下略 AAS



8:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:28:05.18 ID:sKp9/69N0
〜〜〜〜〜
「えへへ、せんせーのおうち、あったかいね!」

「俺自身寒がりだからな……暑かったら暖房弱めるからいつでも言っていいんだぞ」

以下略 AAS



9:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:29:34.07 ID:sKp9/69N0
スピード、ババ抜き、協力7並べ、ルール追加大富豪。
トランプの定番と言えるゲームをひとしきりやっていると、あることに気づいた。
薫の額に、汗が滲んでいる。
それに心なしかトランプも、少しふやけている。手汗のせいか。

以下略 AAS



10:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:30:05.86 ID:sKp9/69N0
〜〜〜〜〜〜
ちょうど米を炊いておいてよかった。俺は炊飯器の蓋を開け、
平らな皿にありったけの中身をよそい、もう一枚の平らな皿の隣に並べた。
手を洗い、塩を用意して、握るのに備える。
懐かしい光景だ。あの頃は、もっと他のアイドル達に急かされながら準備していた気がする。
以下略 AAS



11:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:30:52.08 ID:sKp9/69N0
そんなやりとりをしながら、俺は現役時代の思い出を振り返っていた。
スカウト、オーディション、事務仕事に、送迎。
時には泊りがけのロケでついでにバケーションしちゃったり。
最初期の頃はレッスンなんかも俺がやってたっけな。懐かしい。

以下略 AAS



12:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:32:09.38 ID:sKp9/69N0
〜〜〜〜〜〜〜
俺の食いかけのチキンが放置されたリビングに戻ってきた。チキンを机ギリギリに押しやり、おにぎりの乗った皿を真ん中に載せた。
小皿を持ってきて、まだ辛うじて冷めてないチキンの半分を薫に分けてやる。

「いいの?せんせー」
以下略 AAS



13:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:33:25.72 ID:sKp9/69N0
途端に違和感を覚えた。
形の整ったおにぎり、薫の握ったものだが、これがやたらに冷たい。
まるでずっと外に置いておいたような冷たさだ。

「ん、やっぱ暖房切ると冷めるのも早いなぁ」
以下略 AAS



14:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:33:55.51 ID:sKp9/69N0
〜〜〜〜〜〜
飯を食いながら、俺たちはいろんな話をした。
他のアイドルのこと、ちひろさんのこと、後から来たプロデューサーのこと……

俺の止まっていた時間が、ゆっくりと動き出すようだった。


15:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:34:28.87 ID:sKp9/69N0
食べ終わると椅子から立った薫が

「ごちそうさま!……せんせぇ、またいつか会おうね」

と言った。もう帰るらしい。送ってってやろうかと申し出たら断られた。
以下略 AAS



16:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:35:24.99 ID:sKp9/69N0
おいおい、いってきますじゃなくてさよならだろうが。
なんて指摘を心の中にしまって、薫が帰っていくのをこの目で見届けて、俺は部屋に戻ろうとした。

刹那。

以下略 AAS



17:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:36:18.90 ID:sKp9/69N0



そして俺は全てを思い出した。

以下略 AAS



18:名無しNIPPER[sage saga]
2017/06/26(月) 19:36:56.26 ID:sKp9/69N0
俺は雪に遺されたそれを手に取った。

「おい、薫、ダメじゃないか」

「返せない忘れ物、していくなよな……」
以下略 AAS



19: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/06/26(月) 19:51:15.68 ID:sKp9/69N0
夏が暑すぎて冬の夢を見るくらいには冬が恋しい
夏は活動的になるけど暑いから無理ほんと無理

物語の元ネタは私が今日見た夢です。
森久保のやつもうちょっと待ってください。すんませんほんと。すんません。


20: ◆t6XRmXGL7/QM[sage saga]
2017/06/26(月) 19:51:58.30 ID:sKp9/69N0
参考楽曲
White tree/シド
youtu.be

フユラブ/Juliet
以下略 AAS



21: ◆t6XRmXGL7/QM[saga]
2017/06/26(月) 19:56:18.70 ID:sKp9/69N0
依頼完了

今回も最後まで読んでくださってありがとうございました。
次回もまた宜しくお願い申し上げます。

以下略 AAS



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