【ミリマス】ライアー・ルージュ
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28: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:27:16.32 ID:yFIcZ1s10
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 それ以来、私とプロデューサーの奇妙な関係は慣習として続けられることになった。別に、どちらから始めたわけでもなかった為に、どちらから打ち切られることもなかったのだ。私が朝早く来た時には、彼はどこからともなく現れて見守ってくれていた。遅くに自主レッスンを行う時も、何故か彼は後ろで観察していた。
 私は、いつの間にかそれが当たり前のように感じるようになっていった。
 私がレッスンを終えると、部屋の隅にはいつも、ドリンクとメモが置いてある。夜自主レッスンをするときには、補食もおまけされていた。ドリンクを飲んで、自前のタオルで汗を拭きつつ、メモに丹念に目を通す。それに書いてある事を忠実に守――
以下略 AAS



29: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:27:58.31 ID:yFIcZ1s10
「あれ、いつもと違う……」
 それが数日続いたある日、メモの内容がいつもと違うという事に気が付いた。いつものように項目分けて書かれているわけじゃない末文に疑問を持った私は、その文章を先に確認してみた。
 すると。
 
 『ダンスのキレが良くなってる。ステップのタイミングも合わせられるようになってきてるぞ』
以下略 AAS



30: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:28:54.73 ID:yFIcZ1s10

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 またまた別の日。私は、ウキウキしながら、普段のレッスンを終えた後、いつものレッスンルームへと足を運んでいた。
 ――別に、彼が見ててくれるから浮ついてるんじゃない。ステップアップできる自分が、嬉しいだけだから。
以下略 AAS



31: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:29:24.46 ID:yFIcZ1s10
 訳も分からず肩を落とすと、息を一度だけ大きくついて踊り始めた。
 ――今日は、なんで来ないんだろう。
 身体と心が通い合わせられない。身体がステップを踏む間、心は宙に浮かんでいた。
 集中できない自分が嫌になる。こんな程度で。こんな程度で集中できなくなっていて、アイドルなんてやっていられるのだろうか。
 ――ダメ、しゅうちゅ
以下略 AAS



32: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:30:18.06 ID:yFIcZ1s10

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 ―――あれ?
 まず初めに、自分が横たえられているという事を知覚する。ふんわりと、自分を包んでくれているような柔らかさは、絵本の中に出てくる雲みたいだった。
以下略 AAS



33: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:30:48.01 ID:yFIcZ1s10
 この前の時のように、痛みについて追及してこないプロデューサーさんを少し不思議に思いつつ、私は姿勢を楽にする。さっきよりも少しだけ、安心できた。
 目を細めて沈黙していると、彼が口火を切った。
「なぁ志保。こんな事は、もうこれっきりにしよう」
「――え?」
「元々、負荷がかかりすぎていたんだ。今回はただの貧血程度で済んだけれど、次は頭を打って倒れるかもしれない。事実、俺が見れていないというだけで、こんな事になってしまっているんだ」
以下略 AAS



34: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:31:22.30 ID:yFIcZ1s10
 言葉を探す。今、この瞬間でプロデューサーさんを納得させられるような意見を模索する。でも、そんな意見見つかるはずもなかった。いや、それを口に出せるはずもなかった。
「そうは言ってもな……」
「プロデューサーさんが教えてくれたから、私はここまで出来るようになったんです!」
 必死に、言葉を繰る。量さえぶつければ何とかなるんじゃないか、というそれこそ子供じみた発想。そんなか細い理由でも、今の私は縋るしかなかった。
「一人でやっていたら……私は、もっと大きなケガをしていたと思います。プロデューサーさんのおかげなんです。補助してくれなきゃ、きっともっとムリをして――」
以下略 AAS



35: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:32:00.26 ID:yFIcZ1s10

 ――無理はするな。




36: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:32:26.71 ID:yFIcZ1s10
「あっ……」
 思いついた言葉が、一瞬で霧散した。彼は自身の顔を手でたたくと、私にゆっくり寝てろと言い残して、部屋を去っていった。私には、それを黙って見送る事しかできなかった。
 ――きっと、上達するかどうかは関係なかったんだ。
 私は、もう取り返せない事象を振り返る。意味がないと分かっていた。それでも、私は考えた。なんで、プロデューサーさんとのレッスンを続けたかったのか。
 上達したかったから?それならば、レッスンのやり方を見直してもらうという言葉だけで十分だったはずだ。
以下略 AAS



37: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:32:58.19 ID:yFIcZ1s10

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 ――素敵で儚い夢を見ていた。今では、そう思っている。そう思わなければ、自分自身を許せなくなってしまいそうだから。
 私は、あの日のようにレッスンルームで自主レッスンを続けていた。あの後、一人での自主レッスンは朝だけ、終業後にレッスンする時は、誰かがついているようにするというルールが設けられた。その理屈から言うなら、彼もわざわざ文句を言いには来ないだろう。
以下略 AAS



38: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:33:34.02 ID:yFIcZ1s10

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「志保!今日はヨロシクなの!」
「美希さん、よろしくお願いします」
以下略 AAS



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