29: ◆SESAXlhwuI[saga]
2017/06/16(金) 19:27:58.31 ID:yFIcZ1s10
「あれ、いつもと違う……」
それが数日続いたある日、メモの内容がいつもと違うという事に気が付いた。いつものように項目分けて書かれているわけじゃない末文に疑問を持った私は、その文章を先に確認してみた。
すると。
『ダンスのキレが良くなってる。ステップのタイミングも合わせられるようになってきてるぞ』
「……味気ないんだから」
ぼそりと声を漏らす。こんな一文じゃなくて、面と向かって褒めてくれたら――
「――え?」
思考が、停止した。私は今、何を考えていたというのだろう。
今まで、あれだけ嫌がっていたというのに、面と向かって褒めてもらいたい?私が?要らないと言ったお節介ばかりをかけてくるプロデューサーに?
――ダメ。私じゃないみたい。
未熟な私に分かるのは、この一文が私を高揚させているという事だけだった。
「……よし」
大きく息をつくと、私は再びメモ用紙を読む。一文褒めてもらっていたといっても、他に直すべきところは沢山ある。まだまだ、彼が注意してくれるところは沢山ある。それらを直さなければ、先輩たちには追い付けない。
いつの間にか、彼と共に歩んでいる私自身を、私は何故かとても心地よく感じていた。
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