637: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 21:11:11.84 ID:Wqc3ZOPPO
永井と中野は入口に突っ込んだ自動車を乗り捨て、病院のなかを突っ走っていた。
永井「中野! 戸崎とは一対一で交渉する、おまえは隠れててくれ!」
638: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 21:12:23.20 ID:Wqc3ZOPPO
病室は静かだった。
亜人のテロを警戒し病院側は患者を避難させ、いまでは職員の避難も完了している。建物の中には僅かな人間しかいない。
639: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 21:13:56.02 ID:Wqc3ZOPPO
永井「戸崎さん、あなたの顔なんて二度とみたくありませんでしたよ」
永井圭が緊張を抑えながら言った。
640: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 21:15:30.27 ID:Wqc3ZOPPO
永井「僕の幽霊は命令なしに暴走する。僕の意識が落ちてもひと暴れしてくれるはずだ。とくに、いちばん近いこの女性は……」
永井が肩に力を込めた。肩の位置が低くなった。視線は戸崎を睨んだまま、脅迫の意図を強める。戸崎の眼が殺意に細くなる。
641: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 21:16:46.91 ID:Wqc3ZOPPO
永井は反射的に人質から飛び退いた。両手を開いたまま突きだし、降参する寸前のようなポーズをとる。この行動は正解だった。逃避的に距離をとるための動作が、攻撃してきたのみ反撃しろと厳命された黒服たちの行動を一瞬遅らせた。
中野「永井! こんなことしなくていいだろ!」
642: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 21:18:25.40 ID:Wqc3ZOPPO
永井「日差しが差し込む教室、ホワイトボード、汗ばんだ手が、ノートに張り付く。静かで退屈だが、洗練されてた……こんなはずじゃなかっただろ、アンタも!」
戸崎「ああ! おまえらのせいでな!」
643: ◆8zklXZsAwY[sage]
2018/07/08(日) 21:20:10.34 ID:Wqc3ZOPPO
挑発的にも聴こえる永井の訴えを、戸崎はなかば感情的に退けようとした。そのとき、中野がぐっと膝から立ち上がり、「なあ!」と叫んだ。銃口が中野に向いた。中野は怯まず、戸崎に話しかけた。
中野「おれは難しいことはよくわからない。けど、これだけは言える。おれたちは、何がなんでも佐藤を倒してみせる」
644: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 21:20:57.85 ID:Wqc3ZOPPO
「あ、出てきたぞ」
病院前を包囲していた警官が、入口から出てきた黒服に気づいてパトカーの陰から身体を出した。
645: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 21:22:20.86 ID:Wqc3ZOPPO
タクシーからおりるときになってようやく、アナスタシアはスニーカーをはいた。料金を支払い、女子寮から飛び出したときと同じように駆けていく。眩いなかを走って行くと、すぐに汗が吹き出す。かまわず走り続け、薬局を通りすぎ、病院の裏口へと向かう。
駐車場にはぽつぽつと数台の車が残されているばかりで、そのおかげか、裏口のすぐ側にスペースを無視して横付けされた車があるのを一目で見てとれた。
646: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 21:23:52.48 ID:Wqc3ZOPPO
自動ドアが開き、裏口から永井が歩いて出てきた。顔に陽光があたったのか、足をとめて眩しそうに手をかざそうとしたが、光線はおもったより強くなく、永井はすぐにまた歩き出した。
永井がアナスタシアを見つけたのは、アナスタシアが二歩目を蹴り出したそのときで、光り輝く銀髪がぱっと持ち上がり、風に流されようとするその瞬間、アナスタシアは永井と眼があった。アナスタシアは驚きのあまり足を止め、立ちぼうけてしまった。
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