638: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 21:12:23.20 ID:Wqc3ZOPPO
病室は静かだった。
亜人のテロを警戒し病院側は患者を避難させ、いまでは職員の避難も完了している。建物の中には僅かな人間しかいない。
周囲を包囲している警官たちは命令によって待機したまま、病院内に突入してくる気配はいまのところなく、カーテンが閉めきられ明かりが落とされた病室には人工呼吸器の作動音ぐらいしか聞こえない。
何度も訪れた病室。呼吸器も、身体に繋がった様々な種類のチューブも、寝たきりの彼女も何度も見てきた。何度もマスクに覆われた彼女の顔を見てきた。それが外れてベッドから起き上がる彼女を見ることが望みだった。
いま戸崎が見ているのは、彼女ではなかった。正確に言えば、彼女を視界の中心には収めてなかった。この病室に入って初めてのことだった。
ヘッドボードに両手を起き、睨めあげるように戸崎に視線を向ける者がいた。
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