新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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619: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:25:38.35 ID:Wqc3ZOPPO

 朝のホームルームの一分ほど前に担任が教室に入ってきた。チャイムが鳴るとわいわいがやがやが鐘の音にかき消され、それから椅子が引かれる音がした。起立、着席、ふたたび椅子の足が床を擦る音が響いた。

 アナスタシアは席がひとつ空いていることに気づいた。右隣の列の前から三列目にある席で、そこにはいつも時間ギリギリにやってくる子の席だった。その子は歌が得意で、合唱コンクールの練習のときアナスタシアと同じパートだった。その子の友達は歌がうまいのだからとアナスタシアの隣に彼女をたたせたが、彼女は気後れして緊張したのか歌声をうまく出せなかった。アナスタシアはそんな彼女の手をとって、励ました。眼をみて、微笑んだ。彼女が実力を発揮すると、アナスタシアでも驚くほど透き通った声を響かせた。おかげでコンクールでは一位を取れた。アナスタシアとその子は友達になった。その子は昨日は休みで、どうやら今日も休みのようだ。

以下略 AAS



620: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:27:19.67 ID:Wqc3ZOPPO

 身元不明の遺体のひとつがいま空席になっている生徒だと昨日になってやっと判明した。遺体の数はあまりにも多く、身元確認の作業が終わるまでこれだけ時間がかかったそうだ。その子は佐藤のテロの犠牲者だった。

 空気が音を伝達するのを止めてしまったかのような沈黙がわずかにおり、動揺とどよめきが教室に広がった。泣き出し、えずく者も出てくるなか、担任は告別式は午後にとりおこなわれると告げた。

以下略 AAS



621: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:32:31.53 ID:Wqc3ZOPPO

中野「ない……何も……」


 空っぽの部屋を中野は茫然と眺めていた。コンクリートが打ちっぱなしになっている部屋は、佐藤が亜人たちを召集したホテルにある地下室だった。中野が入ってくるまでそこは音の無い部屋だった。床にうっすら積もった埃が空気の振動や振幅がいままで存在していなかったことを証明していた。
以下略 AAS



622: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:34:27.00 ID:Wqc3ZOPPO

 怒鳴りあう声が壁にぶつかって跳ね返った。言い争いに発展しそうになったそのとき、永井のポケットのスマートフォンが着信を告げた。永井があわてて着信を確認する。


永井「よかった、待ってたぞ」
以下略 AAS



623: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:41:34.02 ID:Wqc3ZOPPO

 ダウンロードが完了した。PDFファイルをスクロールしていると、ふと永井の親指が宙にとめられた。ファイルを読む。永井はほくそ笑みながら口を開いた。


永井「こいつにしよう」
以下略 AAS



624: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:42:54.09 ID:Wqc3ZOPPO

永井「婚約者が意識不明の重体、その医療費を自分で負担してる……保険に入ってないのか。はははっ、これはちょっとやそっとじゃ払い続けられる額じゃないぞ!」


 すこし興奮気味の早口での説明を聴きながら、中野は戸崎のことを思い出していた。自宅マンションのまえでの無慈悲な眼がはっきりと記憶され、その印象が中心となってその他の輪郭や風景を形作っていた。記憶の世界ができあがると、無慈悲な眼の奥を覗きこめるような気になった。それは感情的な背景であり、戸崎の苦悩と、そして自分の同情が存在していた。
以下略 AAS



625: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:45:53.45 ID:Wqc3ZOPPO


コウマ陸佐「上の連中は敵を見くびってる」


以下略 AAS



626: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:47:08.82 ID:Wqc3ZOPPO


 突然、研究者が戸崎をきっと睨み付け、責めるような声をあげた。


以下略 AAS



627: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:48:10.19 ID:Wqc3ZOPPO

 曽我部を制したのは報告の内容が予想できたからだった。おおかた暗殺リストの三人目が消化されたのだろう。今朝遺体が発見された桜井に引き続いてとなると、たしかにそのペースにはすこし眼を見張るものの、別段驚くほどのことでも……


曽我部「岸先生が、暗殺されました」
以下略 AAS



628: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:50:46.90 ID:Wqc3ZOPPO

すぐ眼の前に喫煙室があった。ガラス張りされた透明な隔離所にはクールビズ姿の男性職員がふたり、煙草を吹かして紫煙を吐き出していた。壁掛けテレビが他愛もない午後のニュースを報じていた。
 戸崎は喫煙の欲求をなんとか押さえ込み、自販機横にある合成皮革の長椅子に腰を下ろした。


以下略 AAS



629: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:51:56.15 ID:Wqc3ZOPPO

 携帯の着信音が聴こえた。現実に引き戻された戸崎は、数コールしてからスーツの左側の内ポケットから携帯を取り出した。画面が暗い。着信音は右側から聴こえる。右ポケットを探る。非通知設定の電話着信。


戸崎「私用の携帯に……」
以下略 AAS



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