620: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:27:19.67 ID:Wqc3ZOPPO
身元不明の遺体のひとつがいま空席になっている生徒だと昨日になってやっと判明した。遺体の数はあまりにも多く、身元確認の作業が終わるまでこれだけ時間がかかったそうだ。その子は佐藤のテロの犠牲者だった。
空気が音を伝達するのを止めてしまったかのような沈黙がわずかにおり、動揺とどよめきが教室に広がった。泣き出し、えずく者も出てくるなか、担任は告別式は午後にとりおこなわれると告げた。
アナスタシアのすぐ側にある窓に一匹の蝉が張り付いてきた。蝉はもぞもぞ動いて位置を調整すると、カエルとサソリの寓話で、生まれ持った性質に従うしかなかったサソリのように自らが蝉であるからという理由だけでやかましく鳴き始めた。
アナスタシアは窓の外を見た。ガラスにぼんやりと自分の顔が写っていた。外の世界はいつもの風景と変わらないように見えた。だが、アナスタシアにはわかっていた。自分が見ているのは、人が殺されている世界だということを。
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