新田美波「わたしの弟が、亜人……?」
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619: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/07/08(日) 20:25:38.35 ID:Wqc3ZOPPO

 朝のホームルームの一分ほど前に担任が教室に入ってきた。チャイムが鳴るとわいわいがやがやが鐘の音にかき消され、それから椅子が引かれる音がした。起立、着席、ふたたび椅子の足が床を擦る音が響いた。

 アナスタシアは席がひとつ空いていることに気づいた。右隣の列の前から三列目にある席で、そこにはいつも時間ギリギリにやってくる子の席だった。その子は歌が得意で、合唱コンクールの練習のときアナスタシアと同じパートだった。その子の友達は歌がうまいのだからとアナスタシアの隣に彼女をたたせたが、彼女は気後れして緊張したのか歌声をうまく出せなかった。アナスタシアはそんな彼女の手をとって、励ました。眼をみて、微笑んだ。彼女が実力を発揮すると、アナスタシアでも驚くほど透き通った声を響かせた。おかげでコンクールでは一位を取れた。アナスタシアとその子は友達になった。その子は昨日は休みで、どうやら今日も休みのようだ。

 チャイムが鳴り終わっても担任は何も言わず教壇に突っ立っていた。生徒たちが不審そうに顔を見合わせ、ちいさな泡のようにひそひそ話が起こり始めたとき、担任が重たそうに口を開いた。アナスタシアは教室全体を見渡した担任の視線がただひとつの空席にとめられたとき、その眼が苦しげに揺らめくのを見て取った。

 担任は遺体の確認がとれたと言った。



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