602: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 22:05:08.82 ID:HRQM2WMiO
中野「あそこに食堂があるぜ」
言いながら中野は顎をしゃくって前方にふたりの視線をうながした。張り紙がしてある古びれたサッシの引き戸、ひさしのうえに掲げられた年月に晒されくたびれた白地の看板には色褪せた赤い字で食堂の名称が書かれている。ひと気のない観光地の路地にひっそりとたたずむ商品替えもしたことないようなみやげ物屋、そういう印象を与える食堂だった。
603: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 22:07:03.17 ID:HRQM2WMiO
アナスタシア「アーニャは納豆にします」
中野「日本人だなあ」
604: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 22:09:00.45 ID:HRQM2WMiO
そこだけは何時になってもずっと暗い食堂と隣家のあいだの狭い路地というか隙間から猫が一匹飛び出てきた。猫は着地すると、その猫は白と黒のぶち猫で右眼のまわりの黒い模様が眼帯みたいに見えた。ぶち猫は育ちすぎて鉢植えから地面まで伸びた葉先が鋭尖頭の葉っぱの下を背中を掻くようにして歩き、ふと白い方の眼を永井にとめると腰を下ろし頭をあげ、ぱちくりと両眼をひらいた。
猫の行動をみていたアナスタシアはしゃがんで、できるだけ猫とおなじ視線になろうとした。
605: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 22:10:11.57 ID:HRQM2WMiO
アナスタシア「遊びたがってます」
中野「かまってやれよ、永井」
606: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 22:11:55.27 ID:HRQM2WMiO
食堂の引き戸がガラガラと音をたてながら開かれ、なかから開店準備をしにきた六十代くらいの女性が出てきた。丈の長い襟元の弛んだTシャツを着ていた。猫は女性を見たとたん、一目散に逃げていった。中野が女性にすかさず話しかけ、店内に案内してもらう。
朝食のメニューは白米にごぼうの味噌汁、ふっくらした焼鮭にきのこと卵の炒め物、そして三人が頼んだサービスの納豆はじゃこがまぶされたじゃこ納豆だった。飲み物の緑茶はぬるかった。
607: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 22:13:42.17 ID:HRQM2WMiO
アナスタシア「あげます」
永井「口つけた箸でつまむんじゃねえよ」
608: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 22:15:12.37 ID:HRQM2WMiO
中野が右にくんっとハンドルをきり、自動車はコンビニへと入っていった。アナスタシアは強い遠心力を感じながらスピードが速すぎるのではないかと思ったが、車はスムーズに駐車場に進入していった。
時刻は七時五十分。プロダクション近くのこのコンビニのこの時間帯は客足のピークが過ぎ去ったころで、停まっている車は従業員のものをのぞけば一台しかなく、その車はプロデューサーが運転してきたものだった。プロデューサーは車から降り、コンビニの入口前に直立姿勢で待っていた。どことなく落ち着かない様子だ。
609: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 22:16:25.80 ID:HRQM2WMiO
プロデューサー「お怪我は、ないんですね?」
やっとことでプロデューサーが口を開いた。
610: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 22:17:48.03 ID:HRQM2WMiO
中野「アーニャちゃん、おれらもう行くから」
元気でとだけ言い残し、アナスタシアの返事も待たずに中野は窓を閉めようとした。プロデューサーはあわてて車に近より、中野に話しかけた。アナスタシアは思わずぎくりとする。
611: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 22:19:18.40 ID:HRQM2WMiO
アナスタシア「あの、これからどうしますか?」
プロデューサーの車に乗り込んだアナスタシアが尋ねた。
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