592: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/04/17(火) 22:28:28.99 ID:7BzTB0Y9O
それをきっかけにしてか、演台の校長が哀悼の言葉を言う。黙祷が一分つづき、それが終わると校長は演台から離れ、学年主任と交代した。学年主任も引き継いだように哀悼の言葉を一言いってから、連絡事項に移る。始業式が終わり、教室に戻ってからも担任教師が女子生徒のことでなにかを言った。おざなりではなかったが、演台の校長の言葉にくらべると、深刻さは薄かった。
しかし、それも無理のないことだった。三度目ということもあるし、アナスタシアを含む教室の全員が上級生の死に対して、可哀想と思いつつも、悲しみにくれていなかったからだ。顔も名前も知らない人の死を心から悼むことはできないのは当然だ。
593: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/04/17(火) 22:29:49.05 ID:7BzTB0Y9O
アナスタシアは充電器をそっと手に取り、自分のスマートフォンに差し込んだ。画面が明るくなり、アナスタシアの顔を照らした。不在着信の数は百近い。そのひとつひとつを確認していきたかったが、眠気が限界に近い。
アナスタシアはあきらめて座席に横たわると眼を閉じた。暗闇がいっぱいになる。永井と中野、ふたりの寝息が規則正しいリズムで重なっている。アナスタシアもふたりの寝息にあわせて息をする。心臓の音すらも、呼吸にあわせているかのようだ。やがて、ふたつに重なっていた呼吸の音は、暗い車中でみっつに重なっていた。
594: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/04/17(火) 22:40:58.35 ID:7BzTB0Y9O
今日はここまで。
ほんとはもっと先まで書いてから投下するつもりでしたが、前回から二ヶ月経ちそうだったんできりがいいと思うところまで投下しました。
話が全然進んでないので、短めのをこまめにあげてくスタイルにしたほうがよいのかしらと考え??います。
595:名無しNIPPER[sage]
2018/04/18(水) 21:11:15.80 ID:l9KsL7Sw0
おつ。「たくさん!」の出だしが亜人としか聞こえないの思い出した
596: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 21:54:35.68 ID:HRQM2WMiO
手の中の振動がアナスタシアの目を覚ました。
曙光が空に筋を描いて街を明るくするにはまだすこし時間があったが、あたりの暗闇は淡くなりはじめていた。もののかたちがぼんやりと見えてくる。輸送トラックが高架線を走る音が聞こえた。近くの踏切はまだ沈黙している。
597: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 21:55:55.88 ID:HRQM2WMiO
座席に正座するように膝をついていたアナスタシアは、これまでの経緯をどうやって説明すればいいのかさっぱりわからないでいた。
高架線ではトラックが相変わらず行き来していたし、始発電車も動き出している。窓の外に眼をやれば、踏み切りの色、黄色と黒の縞模様が淡くなった薄闇のなかに浮かんでいるのが見える。ランプが赤く光ると、周囲の薄闇は青みがかっているように見えた。
598: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 21:57:15.64 ID:HRQM2WMiO
いくつかの案を提示する前にアナスタシアは最初のひとつに飛びついた。その性急さが永井には考え無しにみえ、勝手に困ってろといわんばかりにまた眼を閉じて二度寝した。電話口の向こうでは、当然プロデューサーが事態を把握しようと質問攻めをはじめるが、見切り発車の発言に首を絞められたアナスタシアは返答に窮している。
中野が首をのばしてアナスタシアをうかがっている。中野は永井の肩をこづいて起こそうとするが腕を払いのけられる。
599: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 21:58:27.69 ID:HRQM2WMiO
得々とした中野の語りにアナスタシアは眼を見張っていた。それはプロデューサーも同じで、ここまで話を聞いたときにはもう中野のペースにはまっていた。
打ち解けた感じのする通話が続いたと思ったら、中野がスマートフォンをアナスタシアに返してきた。
600: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 21:59:41.72 ID:HRQM2WMiO
アナスタシア「プロデューサー……その、ミナミはどうしてますか?」
いちばんの心配ごとを口にした。口にした途端、自分の言葉にうぬぼれが滲んでいないか不安になった。
601: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 22:01:22.24 ID:HRQM2WMiO
武内P『それは……あとで話したほうがいいでしょう』
プロデューサーは苦しげに言葉を濁して通話をおえた。
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