592: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/04/17(火) 22:28:28.99 ID:7BzTB0Y9O
それをきっかけにしてか、演台の校長が哀悼の言葉を言う。黙祷が一分つづき、それが終わると校長は演台から離れ、学年主任と交代した。学年主任も引き継いだように哀悼の言葉を一言いってから、連絡事項に移る。始業式が終わり、教室に戻ってからも担任教師が女子生徒のことでなにかを言った。おざなりではなかったが、演台の校長の言葉にくらべると、深刻さは薄かった。
しかし、それも無理のないことだった。三度目ということもあるし、アナスタシアを含む教室の全員が上級生の死に対して、可哀想と思いつつも、悲しみにくれていなかったからだ。顔も名前も知らない人の死を心から悼むことはできないのは当然だ。
だが、生徒たちのあいだにはひとつの共通する思いがあった。
十五才で死ぬひとがいるなんて。死は老人か病人のもので、自分たちが死を意識しはじめるのは五十年は先のことだと思っていたのに。
壇上の校長は、生徒たちに向かって、あなたたちも死に得ると告げたようなものだ。死なないように。あなたたちは死に得るのだから。
アナスタシアたちは、そのことに特別おそろしくなったわけではない。ただ死ぬことを悟っただけだ。数学の応用問題の解き方をふと思いついたときのように、自分が死ぬことを生徒たちは悟ったのだった。
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