591: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/04/17(火) 22:22:37.68 ID:7BzTB0Y9O
中学の一、二年のとき。夏休みがあけた九月一日の始業式。全校生徒が体育館に集められていた。アナスタシアは隣の列の友だちと他愛なくおしゃべりしながら始業式がはじまるのを待っていた。マイクで拡声された学年主任の声が響いて、校長先生が壇上へあがる。学年主任と入れ替わるかたちで演台の前に立った校長は、おはようございますと生徒たちに向かってあいさつをした。マイクを通しているにも関わらず、声は低く通りがよくない。そのせいか生徒たちの返事はまばらでためらいがちだったが、校長はやり直しを求めなかった。
校長はこう言った。悲しいお知らせがあります。三年ーー組のーーさん(クラスも名前も覚えてなかったが、名前は女子生徒のものだということだけは確かだ)が夏期休暇中に亡くなられました。交通事故でした。
教師たちの予想に反してざわめきは起きなかった。生徒たちは顔を見合わせたり、固まったりしたまま、息を止めたかのように静まっている。アナスタシアは三年生が列を作っている方へ首を向けた。生徒たちは密に伸びた木々のようで、事故で死んだ生徒のクラスの様子は伺えなかったが、友人らしき女子生徒数名がすすり泣いているのが聞こえた。
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