596: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 21:54:35.68 ID:HRQM2WMiO
手の中の振動がアナスタシアの目を覚ました。
曙光が空に筋を描いて街を明るくするにはまだすこし時間があったが、あたりの暗闇は淡くなりはじめていた。もののかたちがぼんやりと見えてくる。輸送トラックが高架線を走る音が聞こえた。近くの踏切はまだ沈黙している。
寝ぼけ眼で頭がはっきりしないまま、アナスタシアはつねにそうしているという習慣的な理由のみで電話に出た。
武内P『アナスタシアさん、ご無事なんですか!?』
プロデューサーの声にアナスタシアは飛び起きた。勢い余って天井にごんと頭をぶつけてしまい、前部座席で眠っていた永井と中野は起き抜けに後頭部をおさえているアナスタシアを目撃することになった。
寝ているあいだに指が通話ボタンに触れてしまったらしい。
プロデューサーは動揺と焦燥に急き立てられていた気持ちに安堵が入り交じった複雑な感情でいて、通話口から漏れ聞こえてくる、がなりたてないように抑えられながらもアナスタシアの状態と居場所をはやく把握しようという必死な声が、永井らの耳にも届いた。
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