606: ◆8zklXZsAwY[saga]
2018/05/13(日) 22:11:55.27 ID:HRQM2WMiO
食堂の引き戸がガラガラと音をたてながら開かれ、なかから開店準備をしにきた六十代くらいの女性が出てきた。丈の長い襟元の弛んだTシャツを着ていた。猫は女性を見たとたん、一目散に逃げていった。中野が女性にすかさず話しかけ、店内に案内してもらう。
朝食のメニューは白米にごぼうの味噌汁、ふっくらした焼鮭にきのこと卵の炒め物、そして三人が頼んだサービスの納豆はじゃこがまぶされたじゃこ納豆だった。飲み物の緑茶はぬるかった。
箸が茶碗にあたる。鮭の身はほぐされ、納豆がかき混ぜられる。味噌汁をすする音と湯飲みを卓に置く音。みるみるうちに朝食が三人の胃に納められていく。
アナスタシアは口をもぐもぐさせながら炒め物に箸をのばした。かき分けた卵のなかにきのこを見つけたとき、箸の動きがぴたりと止まった。半円のかさを持ったしめじとの睨めっこ、正確に言うならば一方的に睨まれているという感じだ。アナスタシアは箸で持ち上げ口をおおきく開けてきのこを食べようとした。だが喉が詰まったような飲み込めない感覚がして、結局すこし顎を引いて口を閉じた。何度が同じことをしてみたが、きのこは箸につままれたまま食卓の上に浮いていた。
永井「なにやってんだ」
口を開けたり閉じたりしているアナスタシアを変に思った永井がそう言った瞬間、どうすれば思いついた。アナスタシアはすかさず永井に皿に箸をのばす。
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