500: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:03:10.52 ID:OBzab0O/O
永井「ひー」
永井は悲鳴に似たため息をもらし、腰をかがめて作業をしている山中のおばあちゃんに目をやった。おばあちゃんは黙々と、草取りレーキを振って土の中の根っこを掘り返していた。永井はおばあちゃんの曲がった背中に話しかけた。
501: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:04:38.31 ID:OBzab0O/O
山中「なんだい、ありゃあ。失礼だね」
山中のおばあちゃんは二人の態度にあからさまに顔をしかめた。永井のほうは、あいさつしたときの親しみやすさを表した表情はすっかり消えていて、細まった黒い眼でちいさくなっていく老人の背中に視線を注いだ。
502: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:05:54.94 ID:OBzab0O/O
堀口「あいつは山中さんの孫じゃねえ、永井圭だ」
長い座卓を二つ並べた上座に腰をおろしている堀口がきっぱりと断言した。
503: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:06:56.23 ID:OBzab0O/O
堀口「そんなこといわれてもな」
片ひざを立てて座っている堀口が、場が沈黙に飲まれるまえに口を挟んだ。
504: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:08:23.73 ID:OBzab0O/O
膝を畳んで座った永井は堀口班長の周りにいる老人たちに目を向けてから話を始めた。
永井「山田さん、石原さん、吉田さん、堀口班長。たしかに、僕はどうしようもない人間です……いままでたくさんの人を裏切ってきたし……好き勝手やってきた……」
505: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:10:26.42 ID:OBzab0O/O
吉田「なあ……おれはこんな子が亜人には見えねえよ」
石原「ああ」
506: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:12:22.59 ID:OBzab0O/O
堀口「ははっ」
堀口が笑い声をあげた。目の前の若造はひ弱そうにみえて、取り入りかたををよくわかっている。ほかの老人たちも緊張を解くのにうってつけのタイミングでうってつけの飲み物が差し出されたことに喜んで腰を上げた。
507: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:13:41.24 ID:OBzab0O/O
北さんと呼ばれた長い白髪を後ろに撫で付けた肉付きのいいその老人は、猟銃の先を永井の背中の穴に向け、老人たちの視線をそこにうながした。
細かい孔が密集している背中の銃創から、黒い粒子が泉の水のように湧き出し(といっても、老人たちにその粒子は見えなかった。IBM粒子は亜人にしか見えない)、永井の傷を癒していく。
508: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:14:59.36 ID:OBzab0O/O
「ひいいいぃッ! 亜人!!」
北「化け物め!」
509: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:16:32.76 ID:OBzab0O/O
堀口「あいつ……騙してやがったのか」
堀口は茫然とした面持ちをして言った。
510: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/12/22(金) 23:19:05.08 ID:OBzab0O/O
玄関の戸がガラッと音をたてながら開けられたので、山中のおばあちゃんがその方向に眼をやった。村の顔役たちが集まる集会場に出かけていった永井が慌てた様子で、疾走でもしてきたのか、汗まみれになりながら急いで玄関の鍵を閉めているところだった。
山中「あ、圭君、どうだった?」
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