415: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:00:06.77 ID:4fkctst+O
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416: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:01:29.44 ID:4fkctst+O
永井「一九九四年、ルワンダで八十万人が虐殺されたとき、国際社会は虐殺が進行中と知っていて何もしなかった。虐殺は以前から計画されたもので、それが始まる三ヶ月前にPKO司令官が阻止するために軍事介入を提案したが国連は却下した。資源の乏しいアフリカの小国家の紛争に干渉しても何も得がないからだ」
永井「日本も例外じゃない。当時の国連難民高等弁務官は日本人だった。だがその弁務官が政府に対してできたことといえば、自衛隊を当時のザイールにあった難民キャンプへ派遣するよう要請することぐらいだった。そのキャンプには虐殺の加害者もいたが、加害者と被害者を区別ができないまま支援活動を続けるしかなかった」
417: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:04:23.58 ID:4fkctst+O
>>416の前に入る文章の一つ目です。
中野「あの女の子は逃したって言ってたじゃねえか」
418: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:07:34.29 ID:4fkctst+O
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419: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:09:39.82 ID:4fkctst+O
>>416の前に入る文章二つ目です。
行方不明の原因が事件や事故による場合や生命に危険があると判断された場合、捜索対象者は特異行方不明者に分類され、警察による速やかな捜索が行われる。これに分類される条件はさまざまあるが、そのひとつに十三歳以下の子供や高齢者など、本人のみの生活が困難だと考えられる者という条件があり、十五歳のアナスタシアはこれに当てはまらない。警察が行うであろうことといえば、巡回の際の聴き込みがせいぜいだろう。それに佐藤の爆破テロの件もある。今日のテロが成功すれば、佐藤の情報を得ることが聴き込みの最優先事項になるだろう。あとはタイミングを見計らってアナスタシアが亜人だという証拠映像をアップロードすればいいだけだ。もちろんアップロード地点が発覚しないように工作を施す必要はあるが、平穏な生活を送り続けられるなら全く苦にならない作業だ。
そのアナスタシアといえば、いまも井戸の底にいて、無酸素状態のなかでエンドレスで死に続けている。
420: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:12:02.99 ID:4fkctst+O
−−午後一二時二五分。
プロデューサーはもう何度目にもなる「おかけになった電話番号は……」のメッセージに徒労をおぼえ、携帯電話を耳から離した。それから着信履歴を確認する。不在着信の履歴は五日前から変わっていない。五日前の正午前にはいったそれはアナスタシアからのものだった。プロデューサーからの連絡に折り返したもので、アナスタシアが残したメッセージには、勝手に外出したことへの謝罪とできるだけはやく帰寮するとあった。
421: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:14:23.59 ID:4fkctst+O
デマを信じる者はいなかったが、問題は美波自身がこのデマのような行いをしたのだと思い込んでいることだった。美波が実際にあったことと異なる自罰的な認識に至った理由は、永井圭がこのうえない苦痛を与えられたと暗に示すあの映像のせいだった。
研究所に拘束された弟がどのような目に遭ったか、美波はすでに知っている。同様の苦痛を味わった国内二例目の亜人田中は、佐藤と行動を共にしている。つまり、田中もグラント製薬の爆破に賛同しているということだ。
422: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:15:55.09 ID:4fkctst+O
《「さよならだね」って最後の言葉/耳に残るから 痛いよ/今も 愛しているから》
《ぼくはあなたを愛しています、戸口でパン屑を拾っている小鳥を愛するくらいには》
423: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:17:51.22 ID:4fkctst+O
美波にたいして効果を与えることが可能なのは現状では医師くらいなもので(それも大したものではなかったが)、アナスタシアもその他のメンバーやプロデューサーにできることと言えば、美波の味方であると伝えること、いつでもどんなときでも力になると何度も何度も伝えることくらいしかなかった。このことは彼女たちにはとても辛い事実だった。事態が深刻さを増すにつれ、言葉と実行性の溝が深まり、無力感も増していった。亜人を巡る社会状況にたいしてはどうしようもないとしても、それに押し潰されそうな美波にすらなにもしてあげらない。できないことの多くを認め、それでも寄り添うという意志を見せること。これを誠実に実行するのは、大人、医療に従事する者でも難しいことで、まだ少女であるシンデレラプロジェクトの彼女たちにはなおさらだった。
このような状況のなか、プロデューサーはメンバーたちにまず自分のことを最優先にするよう告げた。自らの心身を健康に保ち、学校に行き勉強をし、友人たちと会話をし遊ぶ。プロデューサーは、彼女たちに楽しいと感じることに後ろめたさを感じてほしくなかった。
424: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:20:01.66 ID:4fkctst+O
現在のところ、彼女たちは仕事を続けられてはいる。だがこれはあくまでいまのところであって、これからはどうなるかわからない。彼女たち一人ひとりの状態をきちんと見極め、状況に応じた対応していかなくては。
アナスタシアが失踪したのは、プロデューサーがあらためて身を引き締める思いになったその矢先のことだった。
425: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:21:37.27 ID:4fkctst+O
その日のうちにプロデューサーは寮監とともに警察に行き、捜索願を出した。捜索願は受理された。四日過ぎた。警察からの連絡はこなかった。プロデューサーは警察に電話してみた。捜査状況はもちろん聞き出せなかった。電話に出た警官は、今回のケースに事件性はなく、家出人の多くは一週間以内に帰ってくるのだから落ち着いて待っていてくださいと嗜めるように言った。
電話が切れたあと、プロデューサーはアナスタシアの携帯に電話をかけた。うんざりするくらい耳にした「おかけになった電話番号は……」のメッセージがまた再生された。
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