421: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:14:23.59 ID:4fkctst+O
デマを信じる者はいなかったが、問題は美波自身がこのデマのような行いをしたのだと思い込んでいることだった。美波が実際にあったことと異なる自罰的な認識に至った理由は、永井圭がこのうえない苦痛を与えられたと暗に示すあの映像のせいだった。
研究所に拘束された弟がどのような目に遭ったか、美波はすでに知っている。同様の苦痛を味わった国内二例目の亜人田中は、佐藤と行動を共にしている。つまり、田中もグラント製薬の爆破に賛同しているということだ。
なら、弟は?
永井圭が拘束されていた期間は十日と少しで、田中よりはるかに短い。もしかしたら、弟はあの映像のような目に逢っていないかもしれないと思うこともあった。そう思った直後、美波は激しい罪悪感と自己嫌悪へ振り戻された。
なにもなかったのなら、なぜ弟は研究所から逃げ出したのか? 仮になにもなかったとして、それはあの段階ではまだということだけではないか。
佐藤と田中は、武力を使ってでも亜人の権利獲得にむけて行動すると宣言した。はたして圭は、彼らの仲間に加わっているのだろうか? この問いがふたたび美波の心に浮上してきた。そして同時に、二つの言葉の連なりも浮き上がり、まるで問いと答えのようにイメージされた。
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