420: ◆X5vKxFyzyo[saga]
2017/09/25(月) 20:12:02.99 ID:4fkctst+O
−−午後一二時二五分。
プロデューサーはもう何度目にもなる「おかけになった電話番号は……」のメッセージに徒労をおぼえ、携帯電話を耳から離した。それから着信履歴を確認する。不在着信の履歴は五日前から変わっていない。五日前の正午前にはいったそれはアナスタシアからのものだった。プロデューサーからの連絡に折り返したもので、アナスタシアが残したメッセージには、勝手に外出したことへの謝罪とできるだけはやく帰寮するとあった。
その日、アナスタシアは日の出前の薄暗い時刻から女子寮を出、どこかに出かけたらしい。七時前に出るときにはアナスタシアの靴はすでになかったと、ロケのため早朝に寮を出発した小早川紗枝が証言した。オフの日だったため外出そのものは問題なかったのだが、いまのような状況でアナスタシアがどこかへ出かけるというのはどこか妙な感じがした。
いま、このようなとき、アナスタシアは美波から遠く離れてしまうような少女ではなかったはずだ。しかし、それは無責任なただの願望に過ぎないのではないかとプロデューサーは思い直した。亜人、とりわけ永井圭の置かれた状況の苛烈さは想像を絶する段階まで突き進んでいて、おそらくまだ止まないだろう。世間では、美波もこの状況を成す要因のひとつと見なされている。多くの憶測がなされ、なかには美波が亜人管理委員会に弟を一億円で売り渡したというデマもあるくらいだ。
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