289: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:45:43.62 ID:8mPTevMeO
秋山「こんなことで……亜人の権利を認めさせられると……思うのか……」
田中「必ず勝ち取る」
290: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:49:58.87 ID:8mPTevMeO
曽我部「これは先日省前で撮られたテレビカメラの映像です」
細い面長の顔をした若い厚労省職員が言う。眼鏡をかけたこの男は曽我部といって、戸崎の大学の後輩だった。曽我部はパソコンを操作して映像を再生する。液晶ディスプレイに映っているのは、先日の亜人虐待の抗議活動を撮影した映像で、テレビ局から直接借りたものだ。念のため、省前にいた人間の顔を調べ、その個人情報を擁護思想者リストに加えるための優先度の低い作業の途中、曽我部は映像に妙な細部を見つけ、戸崎に報告した。
291: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:51:54.20 ID:8mPTevMeO
曽我部「数まではわかりませんが」
戸崎「ズームしてくれ」
292: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:58:21.35 ID:8mPTevMeO
一夜明け、中野は自宅のあるマンションへと帰ってきた。建物内に入ると、ようやく緊張感が薄れるのを感じる。築二十年以上のそうとう古いマンションで、見た目も味気なく郷愁もなにもあったものではないが、長く住んでると、こうした場所でも心は馴染んでしまうのだ。
主婦「おはよー」
293: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:59:35.38 ID:8mPTevMeO
世間話を終えて主婦と別れ、中野は自分の部屋に向かう。疲労のためか中野はだらだらとした足取りで歩いていた。他の住人にまたしたも血まみれのパーカーが目撃されるかもしれなかったが、疲れを癒すために自分の部屋まで慌てて走る気にはなれない。中野はポケットに手を入れたまま、七階の通路を進み、部屋の前まで来た。
中野「お」
294: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:00:51.87 ID:8mPTevMeO
黒服の一人が中野のほうを向きながら、懐に手を入れる。中野は怒鳴ったり、怯えたり、あるいは繕ったりすることはしなかった。ほとんど本能的に部屋から飛び出し、通路を駆け抜け、逃走する。黒服たちもすぐに追走する。彼らは言葉を交わすこともなく、自然に二組に分かれ、一方は中野の追走、もう一方は階下へ向かい反対側へとまわる。
下村はマンションの前に停めた車の中で、黒服たちが待機している仲間に放つ大声を聞いた。
295: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:01:42.61 ID:8mPTevMeO
中野「あ!」
通路を疾走している中野の正面、通路の曲がり角から先回りしていた黒服が現れ、麻酔銃を中野めがけて撃つ。中野は咄嗟に手すりを掴み、滑り込むように体勢を低くする。靴の裏が通路を滑り、中野はあやうく仰向けになって倒れてしまいそうになる。中野にむかって発射された麻酔ダートが追手のひとりに刺さる。
296: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:03:19.26 ID:8mPTevMeO
黒服1「押さえておけ! 近距離で撃ち込む!」
中野を追ってきた黒服が、麻酔銃を引き抜きながら叫ぶ。
297: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:05:37.79 ID:8mPTevMeO
マンションのすぐ近くに電柱があった。電柱に張り渡された電線は、手すりのすぐ下を通っている。なぜと思う間もなく、黒服は瞬時に手を離した。 落下する中野が電線に引っかかる。当然、細い電線では落下する人体を受け止められない。電線を固定しているアンカーが耐え切れず、弾けとぶ。
真鍋「おいおい」
298: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:06:52.84 ID:8mPTevMeO
下村「え」
突然の命令に、下村はハンドルも持たずに聞き返すことしかできない。
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