292: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 12:58:21.35 ID:8mPTevMeO
一夜明け、中野は自宅のあるマンションへと帰ってきた。建物内に入ると、ようやく緊張感が薄れるのを感じる。築二十年以上のそうとう古いマンションで、見た目も味気なく郷愁もなにもあったものではないが、長く住んでると、こうした場所でも心は馴染んでしまうのだ。
主婦「おはよー」
中野「あ、おはようございます」
七階でエレベーターから下りると、顔馴染みの主婦と顔を合わす。四十代半ばの眼鏡をかけた女性で、顔を合わせば世間話をする仲だ(中野にとって、たいていの住人がそうだった)。
主婦「あらやだー、血出てるわよ」
主婦は中野の血に染まったパーカーを見て言う。あまり焦った様子はない。
中野「ハハハ、コレ?」
主婦「救急車呼ぶ?」
中野「いや、大丈夫だから」
と、そこで中野は主婦が手に持っているゴミ袋に気づく。
中野「あ、ゴミ出し……」
中野は何事もなかったかのようにいつも通りの態度で、ゴミ袋を指差しながら言う。
中野「おれどうせすぐ出かけるから、ここに置いといてくれれば持ってくぜ?」
主婦「痛そっ。救急車呼んだほうがいいわっ」
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