297: ◆8zklXZsAwY[saga]
2017/07/08(土) 13:05:37.79 ID:8mPTevMeO
マンションのすぐ近くに電柱があった。電柱に張り渡された電線は、手すりのすぐ下を通っている。なぜと思う間もなく、黒服は瞬時に手を離した。 落下する中野が電線に引っかかる。当然、細い電線では落下する人体を受け止められない。電線を固定しているアンカーが耐え切れず、弾けとぶ。
真鍋「おいおい」
下で待ち受けていた二名の黒服が見たのは、頭から落ちてくる中野と苦しみに狂ってのたうちまわる蛇のような電線が自分たちに降りかかってくる様子だった。断線したところから漏れる電流はまるで蛇の舌のようだ。張力から解放された電線は鞭のようで、当たればその部分の肉が引き裂かれることは必至だ。
黒服たちは、頭をかばいながら植込みから飛び退ると、同時に中野が木の中に落ちる。二〇センチ程の枝が脇腹に突き刺さり、黄色いパーカーを赤く染めた。
中野「くッ……そぉ……!」
中野は痛みのあまり目を閉じた。だがすぐに、涙が滲む瞳を開けると上体を起こす。
中野「まだまだ」
そう呟いてから、中野は植込みからマンション前の道路にむかって走り出す。黒服の一人が追いかけようとするが、もう一人の黒服が「よせ、感電するぞ!」と叫びながらスーツの背中を掴んでとめる。中野が道路に出る。
戸崎「はねろ」
中野が逃走する様子をフロントガラス越しに見ていた戸崎が運転席の下村に命じた。
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