勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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553:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:10:39.90 ID:dyU/3Fo20
大魔王は戦闘態勢を解き、再度勇者に語り掛けた。
大魔王「勇者よ……これが最後だ。今一度問う。剣を収める気はないか?」
大魔王「このままだと、俺は奥の手を使わなくてはならなくなる。これをしてしまうと、俺もお前も絶対にただではすまん。そうなる前に、平和的解決を模索したいのだ、俺は」
554:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:11:45.38 ID:dyU/3Fo20
唐突であった。
ほんの僅か、ほんの数ミリほど、大魔王の左手の先に暗闇が生じた瞬間。
大魔王の左腕がもぎ取られ、その穴に吸い込まれていった。
大魔王「ぬ、ぐ…!!」
555:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:12:26.58 ID:dyU/3Fo20
ドスン、と肉を裂く音がする。
大魔王の心臓を、勇者の剣が貫いていた。
がふ、と大魔王は血の塊を吐き出す。
大魔王「…そうか……」
556:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:13:14.79 ID:dyU/3Fo20
時を大魔王城完全崩壊の直前に巻き戻す。
勇者は大魔王の拘束を解き、出口に向かって城内を駆けていた。
振動は絶え間なく続き、頭上からは次々と巨大な瓦礫が降り注いでくる。
その内のひとつが勇者の体を直撃した。
しかし勇者はあっさりとその瓦礫をひっくり返して立ち上がり、再び駆け出す。
557:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:14:07.37 ID:dyU/3Fo20
―――――全壊したはずの大魔王城において、ひとつだけ傷ひとつ入っていない部屋があった。
室内には円柱形の水槽が三本立っており、それぞれに魔王と同じ姿をした魔物が浮かんでいる。
壁際の本棚には手垢で汚れた様々な書物がみっちりと並んでおり、その中には勇者の世界の言語で記された物もあった。
たくさんの資料が綴られた分厚い冊子を片手に、魔王のサンプルを観察する少女がいた。
ゆるくウェーブがかった黒髪を肩甲骨の辺りまで伸ばしている。
558:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:15:03.51 ID:dyU/3Fo20
室内に響く、もう一人の男の声。
大魔王の顔が凍り付いた。
大魔王が恐る恐る部屋の入り口に目を向けると――――そこには、勇者が立っていた。
勇者「お前が城を崩落させた意味を考えた」
559:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:16:17.64 ID:dyU/3Fo20
――――沈黙。
長い、とても長い沈黙があった。
やがて、勇者が口を開く。伏せられたその顔からは、表情が読み取れない。
勇者「……そうだな。確かに、もうその子がお前の計画を継ぐなんてことは無理なんだろう。俺たちの世界に連れ帰り、人として育てれば、魔界なんて世界があることさえ知ることなく生きていくことも出来るかもしれない」
560:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:17:12.36 ID:dyU/3Fo20
―――――試験都市フィルスト。
勇者の実家を模した家の中で、魔族の娘が窓越しに空を見上げている。
物憂げなその表情からは、彼女が己の父―――『伝説の勇者』の安否を心配していることが容易に読み取れた。
はぁ、と魔族の娘は大きなため息をつく。
561:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:18:17.60 ID:dyU/3Fo20
562:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:18:52.66 ID:dyU/3Fo20
轟音が鳴り響き、烈光が迸る。
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