勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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557:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:14:07.37 ID:dyU/3Fo20
―――――全壊したはずの大魔王城において、ひとつだけ傷ひとつ入っていない部屋があった。
室内には円柱形の水槽が三本立っており、それぞれに魔王と同じ姿をした魔物が浮かんでいる。
壁際の本棚には手垢で汚れた様々な書物がみっちりと並んでおり、その中には勇者の世界の言語で記された物もあった。
たくさんの資料が綴られた分厚い冊子を片手に、魔王のサンプルを観察する少女がいた。
ゆるくウェーブがかった黒髪を肩甲骨の辺りまで伸ばしている。
その額の両端からぴょこんと小さな角が二本飛び出していること以外は、その見た目に人間との大きな差異は見当たらなかった。
年の頃は、人間でいえば12〜3歳といったところか。
部屋の入口のドアが開き、入ってきた者の姿を見て、少女は驚きに目を見開いた。
「お父様!!」
部屋に入ってきたのは、血にまみれた大魔王だった。
大魔王「娘よ、すぐに室内の資料を持ち出す準備をせよ。上の城を崩壊させた。ここはもう研究室として機能できん」
娘はまず、何より目についた大魔王の傷―――無くなった両腕を補うため、新しい義手を部屋の奥から持ち出してきた。
娘「一体何があったのですか?」
義手を大魔王に取り付けながら、娘は問う。
大魔王「勇者だ。俺たちの理想郷に住む人間たちの代表。奴にやられた」
娘「信じられません……神の如き力を持つお父様を凌駕する人間がいるなど……」
大魔王「しかし事実だ。くそ…『伝説の勇者』と奴を接触させたのが最大の間違いだった。まさかこんなことになるとは……これで、計画は10年単位で遅れてしまうぞ」
「いや――――やっぱりここで終わりなんだよ。その計画は」
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