勇者「伝説の勇者の息子が勇者とは限らない件」後編
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556:名無しNIPPER[saga]
2017/06/25(日) 16:13:14.79 ID:dyU/3Fo20
 時を大魔王城完全崩壊の直前に巻き戻す。
 勇者は大魔王の拘束を解き、出口に向かって城内を駆けていた。
 振動は絶え間なく続き、頭上からは次々と巨大な瓦礫が降り注いでくる。
 その内のひとつが勇者の体を直撃した。
 しかし勇者はあっさりとその瓦礫をひっくり返して立ち上がり、再び駆け出す。

勇者「崩壊するまであと十数秒ってところか……」

 そう呟く勇者の顔に焦りは無い。
 それは例え脱出が間に合わず、崩壊に巻き込まれようと、先ほど瓦礫を押しのけたように簡単に生還できることが分かっているからだ。
 そこで、勇者ははたと気づいた。

勇者(……大魔王は、どうしてこんな真似をした?)

 大魔王の最後の様子を見れば、なるほど確かに、狂乱の果てにこんな自爆紛いのことをしたのも納得できる。
 しかし、本当にそうなのだろうか?
 大魔王は賢しい。この程度では今の勇者にダメージを与えられないことなど、百も承知のはずだ。
 あの男が、こんな無意味な真似をするものだろうか?
 死の際に乱心したのだと結論付けるのは簡単だ。
 だがもし、そうではないとしたら?
 この行動にも、れっきとした意味があるとしたら?
 城を崩壊させたのは、勇者の命を奪うためではないことは明白。
 だとしたら、他にどんな理由が―――――
 勇者は踵を返し、再び大魔王城の奥へと舞い戻った。
 直後に大魔王城は崩落し、勇者の姿は瓦礫の中に消えた。




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